閑話 呼び方 ページ24
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｢キヨくん、いつまで彼女のことちゃん付けで呼んでんの？｣
そんなことを言われたのは、つい先日の話。
レトさんの家で優雅に納豆巻きを堪能していた時の事だった。
｢お前ら、お互いちゃん付け君付けじゃん｣
俺の彼女のAちゃんとは、かれこれ2年ほどの付き合いになるだろうか。
レトさんに言われた通り、俺達は互いに呼び捨てはしない。Aちゃんに至っては、俺の事キヨくん呼びだし。
下の名前なんて、彼女だけじゃなく長いこと誰からも呼ばれてないな。
大して理由なんてない。
ただ、Aちゃんが俺より結構年下で。
付き合うってなった時に、｢いきなり呼び捨ては申し訳ないです…｣とのことで今の呼び方に収まった。
敬語を外させるのにも半年近くかかったAちゃんに、呼び捨てなんて出来るのだろうか。
ほんの少しの好奇心から、俺は彼女に申し出ることにした。
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｢呼び、捨て…｣
｢うん、どうかなって｣
Aちゃんはと言えば、鳥みたいに目を丸くしてからすぐに困った顔になった。
コロコロ変わる表情も好きだなあ。
｢そろそろ2年だしさ｣
｢ね？A｣
まだ少し違和感のあるそれを口にする。
と、彼女の肩がビクリと揺れた。
｢え？…どうした？｣
｢いや、…違くて｣
何が違うのかも分からないけれど、Aちゃんは顔を真っ赤に染めてそう答えた。
もしかし、て
｢…思い出した？｣
俺の言葉に、Aちゃんの赤い顔が余計に赤みを増した。それはもう、茹でダコのように。
声を出す代わりに、コクリと小さく頷く。
なるほど。そういうことか。
とは言うものの、俺達は普段呼び捨てをしない代わりに夜の時だけ互いの名前を呼ぶ。
別に決まってるわけじゃないけど、なんとなく、雰囲気でそうなることが多いってだけ。
ほとんど、反射神経のようなものなんだろう。
｢A、｣
その声にまたAちゃんが反応した。
その姿を見るのが、どうにも楽しくて。
(…まだしばらく、ちゃん付けでいいかもな)
慣れちゃったらつまらない。
この反応を見られる内だけは、あともう少しこのままで。
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作者名：ゆき
| 作成日時：2020年4月25日 11時
