まじめなこひつじちゃん ページ23
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翌朝、リビングに出ると橘さんが朝食を作って待ってくれていた。
お礼になるかわかりませんけど、どうぞ。
なんて言って。
二人で食卓を囲み、いただきますをして朝食を食べ進める。
すっかりと太陽が見えてしまった空は、お別れの時間が迫っていることを告げていた。
｢電車、動いてるみたいです｣
｢そう？よかったな。｣
トーストを口に運んで、ぶっきらぼうにそう答えた。
いっそのこと、ずっと止まっててくれれば、なんて。
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｢服はまた後日返しますね｣
｢本当にありがとうございました｣
ぺこりと頭を下げる橘さん。
何も言えずに、彼女を見つめる俺。
俺は、よくやったよ。
あの時あそこで踏みとどまれたんだから。
だからさぁ、な？
ちょっとくらいいいじゃんか。
｢A｣
玄関へ歩みを進めた彼女の背中にそう投げかけた。
立ち止まりはするけれど振り返ることは無い。
あぁ、やっぱり。
橘さんは、真面目だった。
俺たちとは仕事と割り切って一線を引いて接してる。
気配りもできて心優しい。
だから例えあの時起きてたとして、目を開けたりなんてしないんだよ。
変なことはしないと、そう約束した。
約束通り、変なことはしなかった。
あんなキス、俺が数年思い続けてきたのに比べれば不思議ではない。
気づいていた。
今朝から彼女の視線がやけに忙しないこと。
少し増えた愛想笑いも。
あの時のごめんねは、君が起きてると思ったから。
優しい君が知らないふりをしてくれてるのをいいことに、俺が甘えてしまったから。
｢…気づいて、たでしょ？｣
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作者名：ゆき
| 作成日時：2020年4月25日 11時
