さくしなおおかみさん ページ22
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｢泊まってけば｣
それはもう、完全なる下心だった。
数年前から、イベント関連で色々とお世話になってた橘さんに、そう申し出た。
マネージャーとまでは行かないけれど、イベントスタッフと一概に括るには遠すぎる。
情けないことに、数年前から俺は彼女に惚れていた。
橘さんは、いい子だった。
与えられた仕事はもちろん完璧にこなすし、与えられてなくたって自分から積極的に動く。
多分、やりがいを持って仕事してるんだろうなぁ、ってそんな感じ。
だからこそ、気づいていた。
レトさんやガッチさんみたいに、彼女に話しかけて仲良くするのは簡単なんだろう。
けれど、その先に待つのが恋愛ではなく、あくまでもビジネスパートナーとしての信頼しかないことを、気づいていた。
真面目な彼女だからこそ、演者に手は出さないし、そういった不純な気持ちを持って俺たちに接することは無い。
だから、嬉しかった。
家に泊まれと言った時、少し拒んだ彼女が。
あぁ、俺の事ちゃんと男として見てくれてるんだって、そんな気がして。
｢変なことしないから｣
なんて、男のセリフで1番信用出来ないそれを吐いてまで。
少し渋った後に、橘さんはようやく折れてくれた。
風呂上がりの橘さんは、かなりデカ目な俺の服を着て。
乾かす時間分待たせるのが申し訳ないと感じたのか、半乾きのままの髪の毛で。
それがやけに色っぽくて。
｢中学生か｣
なんて、彼女を小馬鹿にしたけど。
(一体どっちだか)
橘さんの姿を見て、抑えきれない何かが疼いた俺もまた同じだった。
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作者名：ゆき
| 作成日時：2020年4月25日 11時
