踏み出しちゃった実況者 ページ12
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｢東京って、もっと人が冷たいものだと思ってました。｣
｢キヨさんは、優しいですね｣
そう言ってニコニコと微笑むA。
俺は優しくなんかないよ。
実際、Aのことも最初は疑ってたしね。そんなことは、言わないけど。
｢はは、これからは気をつけろよ？｣
すっかりと打ち解けてしまったからか、俺の拙い敬語は既にとっぱらっていて。
俺が最後の一口を運び終えたと同時に、Aのカップも空になった。
何ともない空気が流れる。
先に口を開いたのは、俺だった。
｢そろそろ、出よっか｣
｢…はい、｣
心做し、
Aの表情が曇る。
見てない
気づいてない
｢夜遅いし、気ぃつけて帰れよ｣
美味しいケーキも食べれたし、
若い女の子と楽しい会話ができたし、
今日は、やっぱりついてるな。
…うん、ついてる。
さよならを口にしないAに、ほんの少し足が止まったけれど、俺は踵を返した。
楽しかった。
それでいい。
｢あ、の！｣
Aが、俺の手を掴む。
｢…また、会いませんか｣
Aは、スマホを片手にそういった。
ダメだって。
まだ、わかんないだろ。
もしかしたら、この子は、俺の事知ってるかもしれない。
簡単に、教えちゃ、
｢いいよ｣
自分のした発言に気づいた頃には、既に彼女の連絡先が俺のスマホに入っていた時だった。
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作者名：ゆき
| 作成日時：2020年4月25日 11時
