主演は務まらぬ ページ2
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俺とAは、多分似た者同士なんだと思う。
Aは、うっしーと付き合ってはない。
それなのに、既に恋人のようなことは至しているそうな。
俺とのキスなんかよりも、もっと大人なことを。
(やっべ…涙でそう)
酒は嫌いだ。
己の弱いところがむき出しになるから。
じんわりと熱を帯びていく目頭を抑えた。この熱は、酒のせいか、はたまた。
｢じゃあ、そろそろ帰ろっか｣
レトさんの一言で、飲み会が終了を迎える。
俺とレトさんとガッチさんは、駅の方に。
Aとうっしーは、逆側に。
｢じゃあな｣
ヒラヒラと手を振る牛沢に、レトさん達が返す。
俺が振り返すことは、無かったけど。
(Aの家…そっちじゃねえだろ)
次第に小さくなっていく二人の背中を、ずっと見ていた。
ついに曲がり角へと差し掛かった時、牛沢はAの肩を抱いた。
見なければよかった。
気づかなければよかった。
レトさん達の後ろを着いて歩きながら、ぼけーっと空を見上げた。
こんな都会の夜に、星なんて見えるわけもない。
ただ、今下を向いたら、何かが溢れてきそうで。
うっしーは、嫌いじゃない。
だからこそ、厄介だった。
彼に恋人はいないし、Aとそういった関係になることを咎める人物もいない。
俺が口出しできることじゃない。
頭の中でそう理解はしていても、どこか割り切れない。
俺が、Aに好きと伝えたことは無かった。
ただ、俺の気持ちを汲み取ったのか、先にキスをしてきたのはAの方だ。
一瞬、天にも舞った俺の気持ちは、その次の瞬間地に突き落とされる。
｢私、牛沢が好き｣
そう言って、彼女はまたキスをしてきたっけ。
酷い女だ。
けど、拒めなかった俺も俺だ。
彼女が好きだった。
どうしようもないくらいに。
｢キヨ、優しいね｣
とうとう俺は、彼女のことを受け入れてしまった。
牛沢が好きで、俺の事なんて微塵も興味ないAのことを。
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作者名：ゆき
| 作成日時：2020年4月25日 11時
