心配の二文字 ページ5
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「───虎杖の弟?あぁ、あの有名な?」
瞼までも緩んでしまいそうな昼下がり、向かいの席でお弁当を啄く野薔薇が気だるそうにそう口にした。
「え、野薔薇知ってるの!?」
「逆に何でお前は知らないんだ……。」
「嘘っ、伏黒も?」
そんな野薔薇の横で呆れたように溜息をついたのは伏黒。あ、溜息ついたな。やっぱ不良は溜息つきがちな生物なのだろうか。
「虎杖宿儺。私は高校でこっちの方来たから知らないけど、中学の頃から何かと有名だったらしいわよ。」
「……え、まじ?」
「俺もなんか一回目つけられたな」
「あの伏黒さんに楯突く輩がいたんですか……?」
「お前要所要所で俺の事元ヤン呼ばわりすんのやめろ」
「だって事実じゃん」
何食わぬ顔でそう言ってのければ伏黒名物睨みをかまされる。この子のこの表情でさえ可愛いと思えてしまうくらいには昨日のアイツは可愛くなかった。うん、本当に。
その後の二人の話を要約すればこんな感じ。
虎杖宿儺。悠仁の双子の弟で、瓜二つのその容貌に反し中身は悠仁と真反対だとか。悠仁の反対、つまり最悪である。
悠仁の双子であるからこそ根も葉もないような黒い噂は立たないが、裏を返せば今立っている噂は全て真実であるということ。
定期的に人を病院送りにしてるだとか。
日頃から警察のお世話になっているだとか。
挙句に目元の傷は渡世入りした時につけられたとも。
…………うん。
「もしかしなくても私やばい?」
「はは、帰り道刺されんじゃないの?」
「馬鹿か、アイツなら素手で心臓一発だ」
「お二方の辞書に心配という二文字はないのでしょうか?」
「ない」と二人の声が重なる。嘘でしょ。
……まあ、流石に。流石に不良と言えど、犯罪紛いな行為に走ることはないと思うけれど。
「離せ、不愉快だ。」
「何をジロジロと見ている、さっさと失せろ」
「殺す。理由はない。」
……うん、最後のはごめん。存在しない記憶。
「……私が死んだら証言しておくれ。」
辞世の句でも用意しようかな。
私の言葉に無言で親指を立てる二人。だから心配しようよ、ねえ。
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眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます! ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか!頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました! (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん!コメントありがとうございます!!前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません!新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます!最後までお付き合いありがとうございました! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん!沢山のコメントありがとうございます!!とっても励みになりました!やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです!! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月25日 23時