ブラックコーヒー ページ19
.
額に手を当てて、天を仰いだまま硬直した虎杖弟。
流石のこの男も『仲良くなりたい』という真っ当な言葉に根負けしたのかもう無駄な抵抗はしなくなり。やはり凝り固まった表情のままで「店は任せる」と呟いた。
選択の権利を委ねたのならつまりはそういう事だ。どこに連れていかれようが文句は言えないし言わせない。
ということで、先日野薔薇と話していた駅前の新しいカフェに連れて来た。外観を見るなり「うげ」 みたいな顔したけど気にしない。何処でもいいと言ったのは君である。
「んー!美味しい!」
「……お前、はなからこれが目的か……」
「気にしない気にしない!ほら、アンタも食べてみなよ。」
私の目の前にはザ・女子が好みそうなスイーツ代表ワッフルが二枚ほど積まれている。チョコソースやらホイップやらと見るからに甘そう。
自分のものとはまた別のフォークに一口とって目の前の彼に差し出したが、「要らん」と一蹴されてしまった。
そう言って彼が啜ったのは真っ黒な珈琲。見るからに苦そう。
「もしかしてアンタ女子の前だけカッコつけてブラック飲むタイプ?恥ずかしいからやめな?」
「お前は礼がしたくて俺を呼んだんだよな?」
「あーはいはい失礼ござんした。」
ピキリ、と何かの切れる音がしたから言葉面だけでも謝罪を添える。最近の若者はジョークの一つも許してくれないのか、全く。
行き場のなくなったフォークをじっと眺めて、仕方がないから自分で食べた。いやうっま、変な声出るわ。
「甘いもの嫌い?」
「……あんまり好かんな。」
「へえ〜、勿体無い。」
特に苦しむ様子もなくブラックコーヒーを啜る姿を見るに、どうやら甘いもの嫌いは本当らしい。
カッコつける意外を理由にブラック飲む人初めて見た、気がする。
「……美味いのか?それ。」
「そりゃあね、甘いは美味い。美味いは甘いですから。」
そう言ってまた最後の一欠片をすくうと同時、机の向こうから「デブの思考回路だな」とため息混じりに聞こえてくる。ちょっと静かにしてて。
そうして口元に運んだそれは、私の口に入ることはなく───
「え、」
突然に握られた右手。
ぐいと引っ張られ、身を乗り出した虎杖弟の口の中へクリームが消えていく。
「……ん、悪くないな。」
口の端に着いたクリームをぺろりと舐めて一言。
おい、やめ、悠仁の顔で、おい。
.
681人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます! ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか!頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました! (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん!コメントありがとうございます!!前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません!新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます!最後までお付き合いありがとうございました! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん!沢山のコメントありがとうございます!!とっても励みになりました!やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです!! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月25日 23時