黒と白 ページ16
.
無遠慮に突き刺さる数多の視線に、申し訳程度の苦笑いを零しつつ校門の中を覗く。
出てくるのは私と違う制服ばかり───つまり私は、“他校”の敷地に足を踏み入れようとしているのだ。
そしてそれは言わずもがな彼、虎杖弟の学校である。意外と近いところなんだな、と感心も程々に中を見る。桜色は見当たらない。もう少し待ってみようか。
───私がここに来たのは、仕返しでもなければ復讐でもないし、単なる気まぐれでも嫌がらせでもない。
今日は、虎杖弟にお礼をするためにここに来た。
……そう、うん、わかるよ。何が言いたいかは分かる。『礼はいらない』と、私は面と向かって言われてしまった。何ならもう二度と顔出すな的なことも。
私もそれで了解していた。していた、のだが。
｢これ、宿儺が渡してくれって｣
『ありがとう』
蘇る記憶と、手に握られた綺麗なハンカチ。
……お礼として。しかも捨てていいと渡したものを突き返されてしまっては、こちらも分が悪いと言うか。
言うなればフェアじゃない。彼奴が私に貸しを作りたくないように、私だって貸しを作りたくは無いのだ。……まあ、後は単純な興味。
人間と言うのは、第一印象が悪い相手ほど一度心を許してからはとことん許してしまうらしく。
多分、今の私がその典型。少しでも彼の良い部分を見てしまえば、全てを知りたくなるのが乙女心ってやつ。多分。
───兎に角、私は虎杖弟という人間の何たるかを知りたくなってしまった訳で。
｢……あ！｣
遠く見える桜色。両脇に黒と白。……黒と……え？白？
なんだあの三人組。
なんて疑問も半ばに、私はこちらに向かって歩く三人に控えめに駆け寄った。
虎杖弟は私を見るなり狐につままれたかのようにぽかんとしている。
ニヤニヤと笑う黒髪と、呆気に取られた桜色。真っ先に話しかけてきたのは、白い彼で。
｢もしかして君、宿儺の彼女ちゃん？｣
やけに整った顔がずいと近寄り、私は半歩程後ずさる。驚き故の無言を、彼は肯定かなにかと勘違いしたらしく。
｢へー！そっかそっか！宿儺も恥ずかしがらなくていいのにさ〜｣
｢こんな可愛らしい子だったなんて驚きだな。｣
｢え……と、……え？｣
ニコニコと笑う白色と、最もらしく頷いた黒色。
その狭間で頭を抱える桜色が爆発するまで、あと少し。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 681人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「呪術廻戦」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (
レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます！ ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか！頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます！！ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました！ (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん！コメントありがとうございます！！前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません！新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます！最後までお付き合いありがとうございました！ (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん！沢山のコメントありがとうございます！！とっても励みになりました！やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです！！ (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゆき
| 作成日時：2021年2月25日 23時
