不器用な ページ13
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「……やっぱり、なんかお礼させて。借りっぱなしってすんごい気持ち悪いし。」
「執拗いぞ、要らんと言ってる」
「何でそんなに頑なに拒むのさ」
「お前と会うのはこれきりにしたいからな」
「やっぱお前可愛くないな」
「言ってろ」
律儀な男だと思っていたらとんでもない失礼野郎だった。ふざけるな。私の純情な気持ちを返せ。
……が、まあ。あんなに優しい虎杖弟を見てこちらもモヤモヤしていたところだ。これくらい棘がある方がかえってやりやすい。
どうしようかと考えながら、ちらと隣を歩く彼を横目で見やった。常に釣り上がり気味の眉と、真一文字に結ばれた口。
そうして私の視線は、彼の頬の上でピタリと止まって。
「ねえ、怪我してる。」
「……ただのかすり傷だろう。」
「血垂れてるよ……ほら、」
「放っておけ」
少し背の高い虎杖弟の頬に手を伸ばすも、バシバシと容赦なく弾かれる。
閃いた私は、徐に鞄の中から自身のおろしたてのハンカチを取り出して。
おい、だの。やめろ、だのと呟く虎杖弟の頬に無理矢理押し当てた。
「っ、お前っ、……」
「あー、大人しくしてって。」
「……汚れるだろ」
「別にいいよ。ほら、貸し作りたくないのはあんたも一緒でしょ?これあげる。捨てていいから。」
まあ本当は買ったばかりなんだけどね、と心の中で呟きつつも口には出さず。
「これでチャラね。」
「……まあいいだろう。」
「うんうん、……あ、じゃあ、私家ここだから。」
血の着いたハンカチを見つめる虎杖弟に声をかけ、私は家を指さした。顔に傷のある悪人面の男が可愛いもの持ってる絵面は少し面白い。
彼は視線はこちらにくれてやらず、「そうか」と低く呟いたぎりまた一歩踏み出して。
またね、も何も私達には必要ない。多分もう会わないから。それにしても、さよならくらいは言ってくれても良かったのに。
「…………あれ?」
───妙な違和が胸の戸を叩く。
悠仁の家って、確か私よりも手前側にあったよな。……てことは、此奴も。
「……ねえ、あんたもしかして」
送ってくれたの?
……と、口を開いた頃には姿が消えていた。去り際に聞こえた踵を返す音は、きっと。
「……変なやつ」
虎杖弟。
最後の最後まで彼らしい態度に、不思議と嫌な気はしなくて。彼なりの不器用な優しさを噛み締めるように、私は頬を緩ませた。
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眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます! ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか!頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました! (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん!コメントありがとうございます!!前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません!新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます!最後までお付き合いありがとうございました! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん!沢山のコメントありがとうございます!!とっても励みになりました!やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです!! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月25日 23時