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男というものは非常に面倒臭い生き物である。
いつかどこかの友人の言葉がふと頭を過り、突き付けられた現状も相まって私は今ようやっとその言葉の真意を理解することとなった。
「楽しくなかったら帰ればいいからさ、ね?」
「今現在既に楽しくないので結構です。」
「そんなこと言わずに!一人で暇してるでしょ?」
「いえ、ツレがいますから。」
まさか世間で言われている“ナンパ”とやらを自分が経験することになるとは思ってもなかった。流石は東京と言ったところか。現に道行く人はこの状況を見ても我関せずと言わんばかりに視線を逸らしている。
「じゃあそのツレの子も一緒に来たらいいからさ!」
「……。」
埒が明かない、か。
しかもこの男、私のツレを完全に女だと思っている。
こんな東京の街のど真ん中に私を置いていった挙句肝心な時に傍にいない無能なツレ───虎杖悠仁が食べ物に釣られて飛び出していったのは十分ほど前のこと。
本当に無能である。漫画や小説のような定石を期待して時折周りをチラチラとみても影も見当たらない。私はヒロインになれないってか、ふざけんな。
……まあ、そもそも彼氏でもないただの男友達に買い物に付き合って欲しいと連れ回したのは私。
漫画や小説のような定石は起こらずとも、だ。
「────あ!悠仁!!」
助けに来ないなら助けさせればいい。
人混みの中、遠巻きに見えた桜色の後ろ姿に叫ぶ。
かなりの大声で叫んだにも関わらず振り向かない悠仁に嫌気がさしつつも、ナンパ男を振り切って彼の元へ走った。
「……ツレって、彼氏のことなんで!!」
人混みの中掴んだ腕。
無理やりに隣に引き寄せて、ナンパ男に見せつける。
ごめんね悠仁、彼氏役させて。
「……ひっ、」
悠仁の顔を見るなり顔を青く染めていく男。ふふん、勝負あったな。
「…………あ?」
「え……?」
上の方から降ってくる低い声。
……低い?というか悠仁、身長大きくなった?こんな短時間で?成長期?
それに……目の前のナンパ男の怯えようが異常な気が……。
「──Aー?今俺の事呼ん……」
「は、え……?」
───前方から呑気に顔を表した、“私のツレ”。
……この、人、は?
「…………誰だ、お前」
私、世紀の人違いを起こしたかもしれません。
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眠民。 - 完結おめでとうございます!!私は虎杖ガチ勢(既視感)なのですが、ゆきさんのお話がきっかけで宿儺沼にもハマりかけています‥!受験生なのに神作品ありがとうございました!頑張ってください!!応援してます~!! (11月26日 14時) (レス) id: 7e432fa76e (このIDを非表示/違反報告)
シロツメココロ - 完結おめでとうございます! ゆきさん小説が私の宿儺推しに目覚めさせてもらったキッカケです。もう、宿儺小説を読み漁って漁って……次回は夏油さんですか!頑張ってください。受験…私も来年通る道です。応援しています (2021年3月17日 18時) (レス) id: a3d2b1e1b5 (このIDを非表示/違反報告)
琴吏(プロフ) - 完結おめでとうございます!!ゆきさんの書く宿儺と悠仁が大好きです、、泣 宿儺が幸せな恋を描いて下さりありがとうございました! (2021年3月17日 14時) (レス) id: 94ce9bc83e (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ちっぷさん» ちっぷさん!コメントありがとうございます!!前も言ったかもしれませんが、ちっぷさんは宿儺メインを書くきっかけになった方と言っても過言ではありません!新たな可能性を与えてくれて本当に感謝してます!最後までお付き合いありがとうございました! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 麦茶さん» 麦茶さん!沢山のコメントありがとうございます!!とっても励みになりました!やっぱ皆宿儺様好きなんだなあって……笑 こちらこそ、貴重なお時間をこのお話に割いて頂けて嬉しいです!! (2021年3月16日 22時) (レス) id: 19e6a01ed0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月25日 23時