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もし、と思う。

もし俺が、彼女の生きている内に想いを伝えていたなら。




俺は突然すぎた彼女の死を、時間はかかれど受け入れてたかもしれない。

悲しみを憎しみに変えず、あの暗い部屋で己の命を辞めていたかもしれない。



己が、弱かったのだ。

俺はいつだって、あと一歩が踏み出せなかった。





彼女を守れなかった。

彼女に想いを伝えられなかった。



俺は、俺の弱さに目を背けて世界を憎んだ。

だからこの決別は、俺が受けて然るべき罰なのだ。






「最後に一つだけ、どうか話を聞いてくれないか。」





幼子のように泣きじゃくる彼女の頬をそっと撫でて、安心させるように笑いかけた。

呪いの王が、たかが小娘相手に聞いて呆れるかもしれない。それでいい。



もう、嫌という程苦しんだ。

もう、嫌という程孤独を知った。

この先後悔なんて、出来る訳もないだろう。






「愛する人一人守れなかった、哀れな男の戯言だ。」





千年前の俺が見たら、俺は俺を笑うだろうか。

己の全てを投げ打って求め続けた人を目の前にして、何も出来ない俺を俺は憐れむだろうか。






「今から言うことは、この場で忘れてくれ。」






───……でも、彼女の顔を見ると込み上げて堪らないのは愛おしさだから。




涙に溺れてしまったその美しい瞳も。

吐息に見紛うような、俺の名を呼ぶ声も。

鼻をくすぐる優しい香りも、全部。







「一度しか言わん。」








一歩、俺は彼女に近づいた。

千年間、交わることのなかった二人の運命が指の先だけ触れ合った。




一歩、彼女の丸い瞳が俺を捉えた。

千年間、待たされ続けたけれど、その視界めいっぱいに俺だけが映っているのだと思ったら。






千年間、世界が俺たちを拒んでも。


この一瞬が俺たちを受け入れてくれるなら、それも悪くないかと、そう思えた。









「───A、愛している。」









たった一拍。

それが俺たちに許された、唯一の永遠だった。




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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時

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