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時を戻そう。
一体何がどうなってああなったかって、遡ること数時間前。
例の如く学生としての貴重な時間を奪われては任務に駆り出されていた私。もう少し女の子に優しい世界であって欲しかった。
「橘めっちゃ疲れた顔してんね。大丈夫?」
「神は君か……?悠仁君と一緒ってだけでもう大満足だよ、今日もカッコイイね。大丈夫疲れてないよ。少なくとも悠仁君の好きなところ100個言えるくらいの元気はある。」
「分かった!疲れてんのな!」
オタク特有の長文を語り尽くせば今日も今日とて推しが尊い。合掌。
正直この笑顔だけでご飯十杯はざらじゃない。
とまあ悠仁君への愛を垂れるのもいつもの事で。最初こそ『カッコイイ』だの『好き』だのと言った言葉にいちいち顔を赤くさせていた悠仁君も今となっては笑顔一つで受け流すようになった。
いやぁ、慣れって怖い。
そんな茶番も程々に、指定された廃屋へと赴きさほど強くもない低級呪霊を二人で祓う。
漫画や小説の定石である、ヒロインのピンチ!!……なんてものはまあなくて。
湧いては潰しの繰り返し。私だってもう少しあざとさとか言うやつがあれば、戦闘に乗じて悠仁君に近づけたのかな。
「最後だね……」
一つ一つの部屋を虱潰しに渡り歩き、行き着いた最後の部屋。
往生際の悪そうな呪霊がこちらを見て、ニヤリと気味の悪い笑みを浮かべた。
…………せいぜい四級。悠仁君を呼ぶ必要は無い。
その一心で、敵へ向かう。
……が、
「っ、……!」
耳を劈く爆発音と、忽ちに舞い上がる粉塵。
呪霊の気配はない。さしずめ、どうせ祓われるのならと最後の足掻きとして“自爆”を図ったのだろうか。
ぶわりと舞い上がった体。放射線を描きながら落ちていく体。
大丈夫、足場は安定してる。
このまま着地の瞬間、上手く受身を取れば悪くても打撲で────、
「橘!!何かデカい音したけど大丈、」
「え、」
「あ」
ゴッ、と。鳴ったが早いか、触れたが早いか。
吹き飛ばされた先。運悪く居合わせてしまった悠仁君。
勢いよくぶつかり合う頭と頭。刹那、頭を通って足の先まで一気に駆け抜ける鋭い痛み。
覆い被さる悠仁君の上。
朦朧とする意識の中、鼻腔をくすぐるいい匂いに目を閉じる。
推しの匂いに包まれて死ねるなんて幸せだな。
と、そんな呑気なことを考えながら、私は意識を手放した。
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時