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「そう言えば、何故人を傷つけるのかと俺に問うたな。」




会話の終わりを告げる無言でさえ、彼は打ち破って見せた。
本当にどうしたんだろうか。存外お喋りが好き……だなんて風には思えないけれど。


しかしまあ、確かに尋ねたのは私だ。そしてそれに答えようとしてくれてる以上、私には聞く義務がある。


小さく頷けば、宿儺は落ち着いた声で続ける。





「元来、呪いとは人の心から生まれたものだ。」




とまあ、やって来たのは回答からは大きく逸れた内容。

急に何を言い出すのかと思ったが、それを口に出来るほど彼の語りは軽いものではなかった。





「人間が居なければ呪いは生まれない。逆を言えば、人間が居るからこそ俺たち呪いが居るのだ。」




……何なんだろう。

聞いてはいけないような、聞かなければいけないような。

まるでこの世の全てをこの男が掌握しているような、そんな錯覚さえ覚えたのだ。

だってあんまりにもこの男が述べる言葉が、重くて、正しくて。それでいてどうしようもなく残酷な現実だったから。





「───お前たち人間を苦しめているのは、紛れもないお前たち自身だ。」





心臓が、掴まれてしまった。

再び私を捉えた赤色が鋭く光る。微弱な電流が全身を伝っては、何故か永久にその痛みに触れていたいような快楽さえ感じてしまう。



ただ、残忍な呪いなのだと思っていた。

思慮分別もまるでない、そんな存在なのだと。





「誰も彼も、人間は都合の良いことばかり。」


「己の負の感情には欲のまま従うというのに、いざその矛先が己に向いた途端に皆口を揃えてこう言う。」


「───“話が違う”と。」






彼は。

宿儺は、誰よりも人間という愚かさを知っていた。





「何故自分が呪われなければならない。」

「何故自分が苦しまなければならない。」

「誰のせいだ、誰が悪いんだ、誰を憎めばいいのだ。」





彼こそが、呪いの王に相応しい。

そう思ってしまうほどに、彼の言葉は呪いの何たるかを真に貫いていたのである。





「想いは不変だ。」





心臓の音に見紛うほど、静かな声だった。





「人の感情だけが、いつまでもこの世界には付き纏う。」





正しさの暴力を前に、私はもう何をすることも許されなかった。

何も出来なかった。





「呪いは消えない。」




私は。私たちは、この男こそが諸悪の根源だと、そう思っていた。



本当に、悪いのは、一体。



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設定タグ:呪術廻戦 , 両面宿儺   
作品ジャンル:恋愛
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梅鉢朝桜 - 宿儺様ぁ…(泣) 愛してます、もう本当に…。素敵な作品をありがとうございます!!! (2023年4月26日 23時) (レス) @page43 id: 5a6192c453 (このIDを非表示/違反報告)
レナート(プロフ) - 好き……泣きました。。最高過ぎます…。こんな素晴らしい神作をありがとうございます…。 (2022年3月31日 2時) (レス) @page43 id: 3e48fe4f1f (このIDを非表示/違反報告)
ゆいゆい - なんか原作で泣いたことないのに二次創作で泣くのなんで?特に宿儺と夢主ちゃんが最後話していたところが感動しました!応援しています! (2021年8月10日 14時) (レス) id: de4752e106 (このIDを非表示/違反報告)
好きです大好きです - えっ、何でしょうもうなんか凄かったです(;;)色んな夢小説を拝見していましたが、こんな素晴らしい作品初めて会いました!!本当に素晴らしい作品だと思います、読んでいるうちに情景がすんなり頭に思い浮かんじゃいますよ!お2人が幸せになることを祈ってます(^^♪ (2021年7月23日 17時) (レス) id: fdb8e911e1 (このIDを非表示/違反報告)
睡眠時間 - 途中で全てに気づいた瞬間、グッと溢れ出てきた感動、それと同時に作者様の素晴らしさを目の当たりにした。まるで、全てを見透かされていたかのような、先回りされた感じ。←ポエマーしてみました 一言言うと、最高でした大好きですありがとうございました!!!! (2021年4月20日 0時) (レス) id: ee5607c705 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年2月9日 22時

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