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「…………は?」
俺ですら、そう言わざるを得なかった。
ポロポロと涙を流すAはもう怯える素振りさえ見せず、その涙を拭うこともせず。ただ死にたいのだと言った己を体で示すように、呼吸以外の全てを投げ出していた。
「いや……もう嫌、なの……、
……お願い、します……殺して……っ」
何を言っているのか俺には理解が出来なかった。
何故?俺はこんなにもして君を自分のものにしているというのに、それでも君は俺を見ようとしない。
今目の前にいる生身の人間よりも、君は死を愛するというのか。
線香花火のように儚く散っていく涙に一抹の不安を覚えた俺は、そのまま彼女をリビングのソファに座らせた。
未だ止まることの知らないその涙が見ていられなくって、何も考えぬままAを抱きしめた。細い。俺の腕の中、小さな命の蝋燭が今まさに消えようとしている。
駄目だ。
「……どうして」
どうして、君は。
「どうしてっ、…………、
俺を受け入れてくれないんだ……!!」
何がダメだった。何処で間違えた。
君を愛することが罪だと言うのならば、俺はもう世界を諦めよう。例え地獄だろうと、俺は君がいればそれだけでいいのだから。
「愛しているんだ。君のことを心から愛している。」
もう数え切れない程に吐いてきた愛の言葉が。
君を強く抱き締めているこの腕が。
それら全てが、君に人生を辞めさせたい程の苦痛を味わわせていたのだとしたら。
───……いや、もう考えてる余裕なんてないのだ。
俺は君が好きで。
ただ、それだけで。
「……あい、してる……?」
Aは幼子のように、俺が言った言葉を繰り返して見せた。
「あぁ、そうだ。愛している。」
だから、俺は。
「…………ないでっ、」
途端、腕の中の彼女がわなわなと震え出す。
怯えているのではない。垂れ下がる髪の隙間から見える彼女の口元が、ギリギリと音を立てて歪んでいたのだから。
「……ふざけないで……!!」
どん、と胸元に強い衝撃。
不意の出来事に俺はそのまま後ろに倒れ込み、矢継ぎ早に俺の上へ彼女が乗っかかって胸ぐらを掴んだ。
「何が愛よ!何が、……!何が!何が!!」
「……、A」
「あんたのそれは愛なんかじゃない!!こんな歪んだ愛なんて何も嬉しくない!!
……、あんたなんて大っ嫌い!!!」
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える(プロフ) - はじめまして、今まで読んだ作品の中で一番私にハマった作品です…本当に素敵な作品です。もう本当感謝しかないですありがとうございます!!! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 34190a2143 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - すごい!一気読みしましたよ!怖かったけど…なんか、なんか、すごかった!! (2021年2月1日 19時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます!!その褒め方は初めてされました!!笑 進撃知らないですが友人から伏線が凄いとだけ聞くので多分めちゃめちゃ褒められてますよね、嬉しいです!!笑 こちらこそ、最後までお読み頂きありがとうございました!! (2021年2月1日 0時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 伏線回収が進撃の巨人並みにすごすぎます。。めちゃくちゃ面白かったです。。。最高です。。 (2021年2月1日 0時) (レス) id: bf756d4cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます!言葉選びには気をつけているので、そう言って頂けてとっても嬉しいです!!春の消失点の方もお読みいただきありがとうございます!とっても素敵なコメント嬉しいです!! (2021年1月30日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月17日 20時