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「ほら、あーん。」



あの後、一頻り騒いで体力を消耗したAはもう抵抗する余力もないのだろう、俺がその軽い体を抱えあげればぐったりとした様子で体を預けていた。


彼女の為に用意した部屋の中、運んできた食事を彼女の口元へと近づける。しかし一向に口を開こうとしないA。喉が渇いているのか、と思い、食事を置いてペットボトルに手を伸ばした。





ぱしん、と皮膚がぶつかる音。

遅れてやってくる鈍い痛みと、ごとんと床に落ちたペットボトル。




「…………やめ、て」


「…………A?」


「……っ、貴方が持ってきたものなんて食べたくない」





明確な敵意と、反抗の眼差し。

なあ、A。駄目じゃないか。俺だっていつまでも君に甘いわけじゃない。あんまり反抗ばかりしていると、俺も悲しいぞ。


……まあ、こんなことをして嫌われない訳もない。今はこれでいいのだ。どうせこの先、もうAの瞳に映るのは俺だけなのだから。





「こっち向いて。」


「……。」


「A」




普段よりも幾らか低いその声に、肩をびくつかせどやはり意地でもこちらを見ないA。


嫌になって、面倒くさくなって。

その小さな顎を掴んで、力任せに引き寄せてキスをした。




「んんっ、……ん!」




バタバタと身を捩り始めるけれど、生憎何の抵抗にもなりやしない。
寧ろ次第に潤む瞳や、乱れていく息は俺の欲を煽るものにしかなり得ない。




口が離れ、酸素を欲するように喘ぎ喘ぎ息を繋ぐ彼女の姿が何とも愛おしかった。
彼女の生死が俺の手のひらの上で完結しているというその事実だけが俺をたまらなくさせるのだ。


殺したい程憎い男を目の前に何も出来ない自分が嫌になるか?

この男がいなければ生きていけないという事実を前に君は何を思うんだ?





「……ほら、飲みなさい。」


「……。」


「……分からない奴だなあ、君は。」





徐にペットボトルの水を口に含んだ俺を見て、Aはその先を悟ったのかぎょっとしたように目を丸めた。

逃げようと動く彼女の肩を掴んで引き寄せる。

いや、だの、やめて、だの小さく呟く彼女を無視して、そのまま再び口をつけて飲ませてやった。




「ん、……ちゃんと飲めたな」




大方、餓死でもしてしまえばそれでいいと思っていたのだろうな。

残念だったな。君の命だって俺のものだ。勝手に手放せると思うな。



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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , ヤンデレ   
作品ジャンル:恋愛
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える(プロフ) - はじめまして、今まで読んだ作品の中で一番私にハマった作品です…本当に素敵な作品です。もう本当感謝しかないですありがとうございます!!! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 34190a2143 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - すごい!一気読みしましたよ!怖かったけど…なんか、なんか、すごかった!! (2021年2月1日 19時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます!!その褒め方は初めてされました!!笑 進撃知らないですが友人から伏線が凄いとだけ聞くので多分めちゃめちゃ褒められてますよね、嬉しいです!!笑 こちらこそ、最後までお読み頂きありがとうございました!! (2021年2月1日 0時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 伏線回収が進撃の巨人並みにすごすぎます。。めちゃくちゃ面白かったです。。。最高です。。 (2021年2月1日 0時) (レス) id: bf756d4cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます!言葉選びには気をつけているので、そう言って頂けてとっても嬉しいです!!春の消失点の方もお読みいただきありがとうございます!とっても素敵なコメント嬉しいです!! (2021年1月30日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月17日 20時

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