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途端、昨夜の記憶が走馬灯のように頭を駆け巡った。



場面場面で切り取られている記憶の断片に映る煉獄先生の姿は、どこをとっても狂気に満ちていて。

今も殆ど働かぬ頭で考える。

何処から間違えた?何処までが本当だった?



彼はあんなに優しかったじゃないか。ストーカーから私を守って……、…………、





「ははっ、その目、今更気づいたのか?」




何とかして声をあげようと藻掻くけれど、後ろに纏められた両手と口元を塞ぐ彼の手のせいで思うように動けない。

ストーカーは、彼だ。

私はそんな人に守ってもらっていた?そんな人を優しい人間だと称していた?

じゃああれは?あの時は?昨日、仕事を助けてくれたのも全部彼の掌で踊らされていたに過ぎなかった?




───瞬間、グルグルと巡っていた思考がピタリと止んだ。
だらんと力の抜けた私に気がついたのか、煉獄先生が口元の手を緩めた。





「…………なん、で」


「……。」


「なんで、こん……な、こと」






掠れた声で問いかける私に、煉獄先生は面食らったような顔をして固まった。

かと思えばふっ、と息を吐いて、そうして何がおかしいのかくすくすと私を嘲笑うような声を漏らして。





「───愛しているからに決まってるだろう。」





そんな、歯の浮くような台詞を平然と言ってのけたのだ。




「愛している。ただ君が欲しいんだ。それ以外に理由が必要か?」




凡そ世間では少女漫画の中で聞くようなその台詞も、ギリギリと両手を縛られた今この瞬間においたは脅迫の言葉に相違ない。


愛している?……ふざけている、そんなの。





「……何も、こんなやり方……」


「俺が君に想いを伝えたとして、君は振り向いてくれたか?」


「…………それっ、は」


「…………あまり口にしたくはないが、君が好きなのはあの男なんだろう。」





強まる力。

折れてしまいそうだった。




「好きなんだ。誰にも譲るわけが無い。

君の為ならば人を殺す覚悟だってある。」





……正気の、沙汰じゃない。

ゴクリと唾を飲んで彼を見上げた。光が一切ない虚ろな瞳。

私は、一度に、最悪の予覚が頭を過って。






「不死川先生はっ、……無事ですか?あの人には何もしてませんか……?」




ちっ、と大きく舌打ちが飛ぶ。

不機嫌そうに歪んだ彼の顔を見て、私は間違えたと、そう思う他なくて。

彼は。私が思っていたより何倍も、異常な人間だった。


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設定タグ:鬼滅の刃 , 煉獄杏寿郎 , ヤンデレ   
作品ジャンル:恋愛
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える(プロフ) - はじめまして、今まで読んだ作品の中で一番私にハマった作品です…本当に素敵な作品です。もう本当感謝しかないですありがとうございます!!! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 34190a2143 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - すごい!一気読みしましたよ!怖かったけど…なんか、なんか、すごかった!! (2021年2月1日 19時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます!!その褒め方は初めてされました!!笑 進撃知らないですが友人から伏線が凄いとだけ聞くので多分めちゃめちゃ褒められてますよね、嬉しいです!!笑 こちらこそ、最後までお読み頂きありがとうございました!! (2021年2月1日 0時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 伏線回収が進撃の巨人並みにすごすぎます。。めちゃくちゃ面白かったです。。。最高です。。 (2021年2月1日 0時) (レス) id: bf756d4cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます!言葉選びには気をつけているので、そう言って頂けてとっても嬉しいです!!春の消失点の方もお読みいただきありがとうございます!とっても素敵なコメント嬉しいです!! (2021年1月30日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月17日 20時

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