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そんなこともあったなあと、昔を懐かしんで笑みがこぼれる。怖いと伝えてからの煉獄先生は努めて私に優しく接してくれた。そう考えれば、彼にはずっとお世話になりっぱなしだった。
｢怖くないですよ。寧ろ、とっても優しいなって思います。｣
｢そうか、なら良かった。｣
柔らかな表情で笑いかける煉獄先生が見ていられなくって目を逸らす。
彼と話す時はいつもこうなのだ。人前では常に大きな声でハキハキと話す彼は、私の前ではしっとりとした大人の色気を見せるのだから心臓に悪い。
その後も言葉を交わして、何度か沈黙もあって。
お礼がしたいという旨を伝えるが、煉獄先生は一向に受け取ってくれやしなくて。
このまま助けられっぱなしじゃあ、私の気が収まらないのに。
｢…………。｣
不自然にやってきた沈黙。ふと見やる、煉獄先生の顔。
｢……先、せ｣
声をかけるより先。彼の体が大きく揺れた。
｢先生っ！？｣
明らかに顔色の悪い煉獄先生は、倒れそうになった今この瞬間も私を安心させようとヘラヘラと笑って見せた。
彼の体を支えるように手を回す。私が支えになるかは分からないが、一人でたっているよりも楽だろう。
｢いや……何、気にするな。｣
｢気にするなって……、顔色悪いですよ？｣
私を引き剥がそうとする右手は酷く頼りない。
見れば額にはうっすらと汗が滲んでいる。いつも元気な彼がこうも弱っている姿は初めて見た。
｢……一人暮らしを始めて長いというのに、自炊というものが苦手でな。｣
忙しさも相まって、食事を蔑ろにしていたのが祟ったのかもしれないと彼は笑った。
少し意外だった。完璧な煉獄先生にも苦手なものがあることが。
｢じゃあ！私作ります！｣
｢…………え？｣
｢こんなフラフラな人放っておけません！
大したものは作れませんけど、お礼も兼ねて今から……、どうですか？｣
勢いに任せてそう提案したはいいものの、急にご飯をご馳走するなんて厚かましくはないだろうか。それにご飯を作るとなれば、それ即ち彼の家にお邪魔するということであり、私なんかを家に入れるだなんて彼は、
｢…………いい、のか？｣
｢っ！……はい！勿論！｣
｢───……ありがとう。｣
吐息混じりに吐かれた言葉が。
徐につり上がった口の端が。
何処かいつもと違うように感じたのは、気の所為だろうか。
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える(プロフ) - はじめまして、今まで読んだ作品の中で一番私にハマった作品です…本当に素敵な作品です。もう本当感謝しかないですありがとうございます！！！ (2021年2月15日 20時) (
レス) id: 34190a2143 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - すごい！一気読みしましたよ！怖かったけど…なんか、なんか、すごかった！！ (2021年2月1日 19時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます！！その褒め方は初めてされました！！笑 進撃知らないですが友人から伏線が凄いとだけ聞くので多分めちゃめちゃ褒められてますよね、嬉しいです！！笑 こちらこそ、最後までお読み頂きありがとうございました！！ (2021年2月1日 0時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 伏線回収が進撃の巨人並みにすごすぎます。。めちゃくちゃ面白かったです。。。最高です。。 (2021年2月1日 0時) (レス) id: bf756d4cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます！言葉選びには気をつけているので、そう言って頂けてとっても嬉しいです！！春の消失点の方もお読みいただきありがとうございます！とっても素敵なコメント嬉しいです！！ (2021年1月30日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2021年1月17日 20時
