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年甲斐もなく大泣きしてしまった私は、煉獄先生のお陰で何とか平静を取り戻し一限の授業へと足を運んだ。
時折すれ違う教師からの視線は少し痛かったけれど、あの時助けがなかった未来を考えれば少しはマシに思えて。
そうして、放課後を迎えた。
｢──……あの、煉獄先生。｣
タイピングの手が止まり、息を吐いたそのタイミングを見計らって声をかければ、彼は直ぐにこちらを振り向いた。
思えば、私から話しかけることは少なかったような。
言葉に詰まる私に、優しい瞳でその続きを促す煉獄先生。緊張する。声が震える気がするけど、仕方がない。
｢えっ、と……、この後お暇でしょうか？｣
｢あぁ、今から帰るところだ。｣
｢……！あのっ、良かったら一緒に帰りませんか？｣
言った。言ってしまった。
普段は彼の方から誘いを受けていたから、私から切り出すのは初めてだった。
視界の端の不死川先生がちらとこちらを見た気がした。けれどそれよりも、今目の前で驚いたような表情の煉獄先生が、私は気になって。
断られるかもしれないだなんて思いとは裏腹に、彼は二つ返事で了承したのだ。
＊
何度目かの帰り道。何故か隣にいる彼を見られなくて数歩先を見つめる。
私が彼を誘ったのは、何よりも今日のお礼が言いたかったからだ。
……けれど、生憎私は話が上手い方ではないし、こういう場合において何と伝えるのがベストなのかを知らない。
──やっぱり、また日を改めてからの方が良かっただろうか。
｢ 橘先生。｣
声の方へ顔を上げれば、待っていたかのような瞳と目が合う。
一瞬だけ狼狽えて、しかし次の言葉を聞かねばと小首を傾げ。
｢──“まだ”、俺のことが怖いか？｣
ぎらり、と。
冷えた夜の空気を肌で感じて、息を呑んだ。
煉獄先生の問い。
“まだ”という言葉の真意。
全てを理解した私はまた彼に申し訳なさを感じて、視線を逸らして目を閉じる。
───半年前。まだ殆ど彼と会話を交わしていなかったあの頃。私が彼を苦手だと思い始めたあの頃。
分かりやすいと言われる私の苦手意識が彼に伝わるのは時間の問題だったのだろう。
二人きりの社会科準備室。
彼は私に“俺のことが嫌いか”と問うた。
私はその言葉にかぶりを振って、ただ“怖い”と返した。
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える(プロフ) - はじめまして、今まで読んだ作品の中で一番私にハマった作品です…本当に素敵な作品です。もう本当感謝しかないですありがとうございます！！！ (2021年2月15日 20時) (
レス) id: 34190a2143 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - すごい！一気読みしましたよ！怖かったけど…なんか、なんか、すごかった！！ (2021年2月1日 19時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます！！その褒め方は初めてされました！！笑 進撃知らないですが友人から伏線が凄いとだけ聞くので多分めちゃめちゃ褒められてますよね、嬉しいです！！笑 こちらこそ、最後までお読み頂きありがとうございました！！ (2021年2月1日 0時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 伏線回収が進撃の巨人並みにすごすぎます。。めちゃくちゃ面白かったです。。。最高です。。 (2021年2月1日 0時) (レス) id: bf756d4cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます！言葉選びには気をつけているので、そう言って頂けてとっても嬉しいです！！春の消失点の方もお読みいただきありがとうございます！とっても素敵なコメント嬉しいです！！ (2021年1月30日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2021年1月17日 20時
