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Aが俺を認めてくれたことだけが嬉しかった。
そして何よりあの男を否定してくれたことが、心底満足で。
……しかし、そんな会話も終わりを迎えてまた新たに二人が盛り上がり始める。ただの安全確認だと称した電話ならもう切ればいいのに。
だから、結局。あの男もAを狙っているんだろうな。
楽しげに話すAの声。Aの顔。
全てから目を背けたかったけれど、一粒だってその光を無駄にしたくはないのだ、俺は。
殆ど言葉が耳に入らない中、断片的に拾えた話題は俺がさっきAと話していたようなこと。彼女の好きな物。
勿論それに興味のない不死川はそれが何かを問うているが、そんな彼にもAは懇切丁寧に好きなものについて語り出した。
俺に話していた時よりもキラキラとしたその表情が、俺には痛くて。
「…………何がダメなんだ」
俺の何が足りない?何が、何が。
努力はもう十分しているだろう。もしこれ以上をと望むのならば俺は人だって殺しかねない。
何がいけない?何がダメだった?
堂々巡る思考の行き着く先。
俺は、ゆっくりと、目を閉じた。
───……まだ、甘い。
まだ、まだだ。
高校来の友人がどうした。たったの数年の情で彼女を諦めてどうする。
この先何十年と続く二人の人生に比べれば、犠牲にできないものなんて何一つ無いはずだろう。
湧き上がる黒い感情が俺を染めていく。
不思議と後悔はない。罪悪感だって、何も。
なあ、先に邪魔をしたのはお前だからな、不死川。
俺は今までよく我慢したろう。二人の姿を見ても己を乱さず、煉獄杏寿郎として立ち振る舞ってきたろう。
俺の心を殺したのはお前だ。
お前が、お前が悪い。俺は何も悪くない。
───……あんまり、君を貶めるようなことはしたくないんだがな。
でもしょうがない。もうなりふり構ってられないんだ、俺も。
君を救う人間が俺だけになればいいんだ。君のことを真に理解しているのは他ならぬ俺なのだから。
ぞわりと全身を襲う鳥肌。酷く熱を孕んだ頭。
そっと額に手を当てた。大丈夫、平熱、だ。
「愛している、A。」
俺はただ、君がいればそれでいい。
ごめん。ごめんな。中途半端でごめん。
大丈夫だ。もう今からは君のことだけを考える。友情だとか、そんなのはどうだっていい。
これからも、この先も。俺はきっと、君のことが好きだ。
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える(プロフ) - はじめまして、今まで読んだ作品の中で一番私にハマった作品です…本当に素敵な作品です。もう本当感謝しかないですありがとうございます!!! (2021年2月15日 20時) (レス) id: 34190a2143 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - すごい!一気読みしましたよ!怖かったけど…なんか、なんか、すごかった!! (2021年2月1日 19時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます!!その褒め方は初めてされました!!笑 進撃知らないですが友人から伏線が凄いとだけ聞くので多分めちゃめちゃ褒められてますよね、嬉しいです!!笑 こちらこそ、最後までお読み頂きありがとうございました!! (2021年2月1日 0時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 伏線回収が進撃の巨人並みにすごすぎます。。めちゃくちゃ面白かったです。。。最高です。。 (2021年2月1日 0時) (レス) id: bf756d4cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます!言葉選びには気をつけているので、そう言って頂けてとっても嬉しいです!!春の消失点の方もお読みいただきありがとうございます!とっても素敵なコメント嬉しいです!! (2021年1月30日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月17日 20時