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家へと入る彼女の後ろ姿を眺めながら、俺は最後まで笑顔を絶やさぬように手を振った。彼女も彼女でさっさと扉を閉めればいいのに、律儀にペコペコと頭を下げる様子が可愛くて仕方がない。あぁ、ほら。ちゃんと前を見ないから躓いてしまったじゃないか。
重たい扉の閉まる音を聞いて、俺は笑顔を止めた。
その代わりに腹の底からの愉快な気持ちが口角を気味が悪いほどに釣り上げ、俺の心臓を強く打つ。
また一歩、あの子に近づけた。
今日みたいに不死川に仕事を回せば、責任感の強い彼奴は終わるまで帰れない。
俺と不死川だなんて二人分の名前を出したが、そんな気はさらさらない。君の隣を歩くのは俺だけで十分なのだから。
Aのアパートに背を向けて、そこから徒歩数分の自分のマンションへと足を運んだ。
｢意外と家が近いんですね｣と笑ったA。当たり前だ。朝一秒でも早く君の姿を見るために選んだんだから。
最初は緊張していた様子のAも、この帰り道で随分と打ち解けてくれたように思う。
彼女が口にする話題全てにこちらも興味があるように振る舞えば、盛り上がるのはそう苦ではなかった。寧ろ何の話を振っても乗っかる俺を見て、Aは興奮気味に｢こんなにもお話が合う人は初めてです！｣とまで言っていたな。
そうだよなあ、そうだろう。
君のことならなんでも知っている。だから君の好きなものだって、俺はリサーチを欠かさなかった。それが功を奏するとは思ってもいなかったが。
人間とは不思議なもので、第一印象の悪かった相手ほど一度気を許すととことん許してしまうらしく。
先程のAがまさしくそうだ。
……いや、まだ足りないな。これじゃああの男には勝てない。
家へ入り、鍵を閉め。ネクタイを弛めながら一番に向かうのは自分の部屋。Aの光を求めて。
適当なご飯を取ってきてパソコンの前に居座りイヤホンをつける。一秒でも彼女の姿を見ていたいから、風呂に入るのは彼女が風呂に入る時にしよう。
立ち上げたパソコンに映る君の姿。作り置きであろうおかずを並べて、小さくいただきますと口にした。一人でもちゃんと言うんだな、偉いな。
『──……あ、不死川先生』
和やかな気持ちは一変。突如として聞こえた愛しい声に乗せられた憎たらしい男の名前。
彼女が耳に当てるは自身のスマホ。何故、どうして、何の為に。
不死川先生と呼ぶ彼女の顔が、心做し嬉しそうに見えた。
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える(プロフ) - はじめまして、今まで読んだ作品の中で一番私にハマった作品です…本当に素敵な作品です。もう本当感謝しかないですありがとうございます！！！ (2021年2月15日 20時) (
レス) id: 34190a2143 (このIDを非表示/違反報告)
凪子(プロフ) - すごい！一気読みしましたよ！怖かったけど…なんか、なんか、すごかった！！ (2021年2月1日 19時) (レス) id: 33c3d87eb8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - すずさん» コメントありがとうございます！！その褒め方は初めてされました！！笑 進撃知らないですが友人から伏線が凄いとだけ聞くので多分めちゃめちゃ褒められてますよね、嬉しいです！！笑 こちらこそ、最後までお読み頂きありがとうございました！！ (2021年2月1日 0時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
すず(プロフ) - 伏線回収が進撃の巨人並みにすごすぎます。。めちゃくちゃ面白かったです。。。最高です。。 (2021年2月1日 0時) (レス) id: bf756d4cb5 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 衣世さん» コメントありがとうございます！言葉選びには気をつけているので、そう言って頂けてとっても嬉しいです！！春の消失点の方もお読みいただきありがとうございます！とっても素敵なコメント嬉しいです！！ (2021年1月30日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2021年1月17日 20時
