7. ページ9
.
縋るような視線を鱗滝に送れど、彼は自身の体を温めることに夢中なようで。
「二人も結婚する歳かー」なんて変に一人で思い耽る鱗滝を見て、やっぱり
こんな結婚報告をどうしてそんなにすんなりと受け入れられるんだよ。
「うん、あの、聞いて欲しい。私たち結婚しないからね?」
「え、そうなのか?」
「話が違うぞA。約束したじゃないか。」
「冨岡は黙ってて。」
「はは、橘もそんな恥ずかしがらなくていいのに。」
吹き飛ばすようなカラッとした笑顔でそう言った鱗滝。……完全に誤解されている。そして私が何を言おうが無駄なのだろうな、これは。
分かりやすく頭を抱えれば、小首を傾げる冨岡と鱗滝。いや冨岡に関しては本当に許さない。何もかもお前の所為なんだからな。
ぶっ飛んだこの男のことだ。本気で結婚を考えていても何ら不思議ではない。
そしてそれは受け入れる訳にはいかないけれど、断ればそれはそれで問題が生じる。
もし今みたいに冨岡が「約束を反故された」などと言いふらせば私の信用問題に関わる。
どちらを選ぼうが社会的死に変わりはない。
「……てか、橘こんなとこにいていいのか?」
「え?」
「課題考査がある教科担当は、式が終わり次第事務室で考査の準備しろって朝言われたろ。」
「…………あ゛」
課題考査。勿論英語科は必須。そして私は英語教師だ。
ばっと顔を上げて見やる時計。
既に式が終わってから二十分は経っている。これは明らかに“式が終わり次第”の範疇を超えている。
「…………やっば、」
「これは悲鳴嶼さんの説教コースだな」
「大丈夫だA。旦那として俺が守ってやろう。」
「冨岡はマジで一回黙ろうか。」
……ってこんな茶番はいいんだよ!!
早く事務室へ向かわなければ割と本気で説教コースだろうから。
「とにかく……、冨岡はこれ以上余計なこと喋らないでよ!!」
「……余計なこと」
「私に関すること、結婚のこととか、全部!!」
もうこれ以上冨岡に構ってられなくて、必要最低限を伝えて私は教官室を飛び出した。
最後に見えたのはやはり小首を傾げたままの冨岡。…………不安でしかない。
さて、どうやってこの現状を打開しようか。
.
314人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
華澄(プロフ) - うわぁぁ不死川さん切ない……!けど、とても面白い作品でした……! (2021年1月18日 8時) (レス) id: 10a0ab61a8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 莉子さん» 莉子さん!度々コメントありがとうございます!!私の方こそコメントの通知が来る度飛び跳ねて喜んでました!!笑 文章についてお褒め頂けるだなんて物書き冥利につきます…………!! とっても嬉しいです!ありがとうございます!! (2021年1月17日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - いろはさん» コメントありがとうございます!! 正直見切り発車で不安なところが多々あったので、そう言って貰えて何よりです!!頑張ります!! (2021年1月17日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - ゆきさん完結おめでとうございます、そしてお疲れ様でした!!この作品、本当大好きで、義勇さんが好きって言うのもあったのですが、全く先が読めない展開で、あとは世界観や文章の流れや、行間など、台詞も含めてとても才能を感じてました。新作楽しみにしています! (2021年1月17日 22時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - ヤバいくらいに面白いしキュンキュンしちゃいました!!!もう大好きです((次の作品も頑張って下さい!!! (2021年1月17日 21時) (レス) id: 7954c2eb45 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ゆき | 作成日時:2021年1月8日 11時