【鬼滅の刃】午前零時のシンデレラ【冨岡義勇】

5. ページ7

.



｢私が……？｣


｢Aが｣


｢誰に｣


｢俺に｣


｢……結婚するって？｣


｢結婚すると。｣





すーっ、と息を吸って天を仰ぐ。両手を顔に当てて数秒。

うん、話が全く見えない。

今朝。職員室での不死川との会話で出てきた『結婚』の話題。
確かにあの時の私はこう言った。“誰か拾ってくれないか”と。


それなりに気が合って、収入もある、一緒に居て楽な人。





｢どうした、A｣




今一度見やる冨岡の顔。


この職場についてから同い年として何かと宜しくやってた冨岡。公務員であるから収入も申し分はない。よく喋る方ではないけど、永遠続く愚痴にも付き合ってくれるし無言もさほど苦ではない。


…………満たしている。紛うことなき完全一致。




いやいやいや、でも違うでしょう？少なくとも今朝の私はこの男を思い浮かべてそんなことを言ったわけじゃない。

というか、そもそも。




｢……そんなこと言った覚えないんだけど？｣




そう、これ。覚えがない。絶対に。


例え相手に飢えていたと言っても冨岡に縋るほどじゃない。何なら最近は、もう独り身でもいいかもなんて思い始めてきたところで……ってその話は良くって。





｢…………あれは2年前の忘年会のことだ。｣


｢ストップ喋るな。絶対長いでしょその話。｣





心外！と言いたげに目を見開く冨岡。こういう時だけ表情筋柔らかくなくっていいのよ。





｢簡潔に説明して。10字以内で。｣


｢そんな無茶な｣


｢うるさい、早く｣





こちとら悠長に待ってる時間なんてないの。

生徒たちの噂って早いんだから。在らぬそれが立つ前にこの謎を解決して、皆に真実を伝えなければいけないのだ。


急かすような口調に少しだけ悲しそうに冨岡が眉を下げる。やめろそんな顔するな。





｢忘年会の時、Aは俺の隣に座っていたろう。｣


｢ん……？うん、まあ、覚えてないけど、それで？｣


｢盛大に酔ったお前が、28歳にもなって結婚は愚か相手が居ないと俺に嘆いてきてな。｣




うん、今と全く同じことしてる。ちょっとは学習しろよ自分。嘆く前に彼氏の一人でも……、






｢だから30歳になっても互いに相手がいなかったら俺が貰ってやると言った｣


｢……は？｣


｢Aは笑顔で了承してくれたぞ。｣





……何してんの？私。



.

6.→←4.

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す