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Aの瞳に俺が映っていないと気がついたのは、もう忘れるくらい前の事だったと思う。
｢済まなかった。｣
夜。言葉が白くなって空気に溶ける。
指の先が冷たい。隣に歩くAの顔を見る余裕なんてなかった。俺はただ一心に、前だけを向いて。
｢この一ヶ月、振り回して済まなかった。｣
二度、同じ意味を持つ言葉を俺は繰り返した。
本当に謝りたかっただけなのだ。いくらあの約束……、二年前の酒臭い約束があるからといって、Aに迷惑をかけていい理由には到底なり得ない。
多少強引にこちらに引き寄せてしまえば、優しいAのことだから俺を受け入れてくれるって、勘違いしてた。
｢……幸せになってくれ。｣
いつもは近く感じるはずの君の家が遠く思えてしまうのは、俺が今この瞬間一秒でもこの場にいたくないから。
……分かっている。どうしようもないくらい君の気持ちが俺に向いてないことも、君に彼氏がいることもわかっているけど。
それを君の口から言って欲しくなかった。振られるくらいなら、潔く身を引いた方が100倍はマシだった。
｢…………A？｣
────並んでいた足音の一つが消えた。
何事かと俺も倣って足を止めて振り返れば、そこには何故か悲痛に顔を歪めたAの姿。
……何か、不味いことを言ったろうか。
違うんだ、皮肉じゃない。幸せになってくれって、俺はただ、本当に君の幸せを願って───、
｢……何っ、……勝手に終わらせようとしてんのっ、｣
｢…………え？｣
ざわりと。期待なんて、淡いものじゃない。
本能が腹の底から震え出す感覚だ。
｢あんたっていっつもそう。勝手に抱えて、勝手に苦しんで。勝手に自分の中で終わらせる。｣
一歩、彼女が俺に近づいたかと思えば、細い腕が俺の胸元を叩いた。痛くないけれど、心はちょっと痛いな。だってAが、あんまりにも苦しそうな声を出すから。
｢──……だから、甘えちゃうんだって｣
声が震えていたのは、この寒い冬のせいだろうか。
｢そんな冨岡に甘えて、
……逃げ続けて、ごめんね。｣
震えた肩に手を伸ばし、一度止めて。でもやっぱり見てられなくって、躊躇いがちにその背を撫でた。
……期待、してしまうな。
なぁ、A。俺、まだこの想い、終わらせなくていいのか。
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華澄(プロフ) - うわぁぁ不死川さん切ない……！けど、とても面白い作品でした……！ (2021年1月18日 8時) (
レス) id: 10a0ab61a8 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - 莉子さん» 莉子さん！度々コメントありがとうございます！！私の方こそコメントの通知が来る度飛び跳ねて喜んでました！！笑 文章についてお褒め頂けるだなんて物書き冥利につきます…………！！ とっても嬉しいです！ありがとうございます！！ (2021年1月17日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - いろはさん» コメントありがとうございます！！ 正直見切り発車で不安なところが多々あったので、そう言って貰えて何よりです！！頑張ります！！ (2021年1月17日 22時) (レス) id: debafb75d4 (このIDを非表示/違反報告)
莉子(プロフ) - ゆきさん完結おめでとうございます、そしてお疲れ様でした！！この作品、本当大好きで、義勇さんが好きって言うのもあったのですが、全く先が読めない展開で、あとは世界観や文章の流れや、行間など、台詞も含めてとても才能を感じてました。新作楽しみにしています！ (2021年1月17日 22時) (レス) id: da7568f49d (このIDを非表示/違反報告)
いろは(プロフ) - ヤバいくらいに面白いしキュンキュンしちゃいました！！！もう大好きです((次の作品も頑張って下さい！！！ (2021年1月17日 21時) (レス) id: 7954c2eb45 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ゆき
| 作成日時：2021年1月8日 11時
