【鬼滅の刃】午前零時のシンデレラ【冨岡義勇】

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────── 一月八日 午前五時 キメツ学園職員室にて。




｢……はよーございまーす｣



扉を開けると共に条件反射で挨拶。どうせ誰もいないだろうと適当に済ませたのが悪かった。
眠たい眼を擦りながら中へ入れば、視界に飛び込んでくる銀髪の彼。




｢……えっ｣


｢はよ｣


｢……早すぎじゃない？｣




今日は始業式ということもありスーツに身を包んだ彼───不死川は、私を見るなり作業途中のノートパソコンを畳んで座ったまま体を向けた。

よくよく考えれば鍵が空いていた時点で中に人が居るのは自明なのだけど、まだ半分ほど眠った頭がそれを飲み込むには少し時間がかかり、不死川を見て間抜けな声が出てしまう。





｢仕事残っててさ……、家に居たら寝過ごしそうだったからここでやろうと思って｣




そう言って無理に笑う目の下に伺えるクマ。元より人相の悪い顔が余計に酷くなっている。
首を捻りながら手に握るは、彼が眠気覚ましと称してよく飲んでいる珈琲。甘党の彼がこれに手を出すのは最終手段である。





｢まさか寝てない……？｣


｢んー、そうなるなぁ｣





不死川の隣の机である私。

荷物を下ろしながらそんなことを聞けば、案の定と言った返事が帰ってきて息を飲む。

つまり徹夜か。懐かしい響き。

不死川と同期である私は今年で30歳を迎えたわけだが……、徹夜なんて20代後半からキツくなっている。蓄積される疲労に歳を感じざるを得ない。





｢やっば、体力お化けじゃん｣


｢流石にちょっとキツイけどなァ｣




と言いつつも笑ってみせるほどの余裕はあるわけだ。そんな不死川を見て素直に感心してしまう。





｢……私には徹夜は無理だな……｣


｢まだ三十だろ｣


｢もう三十だよ｣


｢早いねぇ｣




早い、早いよなぁ。歳を重ねる毎に周りから言われる｢三十なんてすぐだよ｣という言葉に生返事をし続けていた私。｢んなわけあるか｣と心の中で悪態をつき続けて数年。彼らの言葉が嘘でないと、今身をもって知っている。




｢冨岡もあと一ヶ月だしよ｣




冨岡。


あぁ、そうだ、冨岡か。丁度あと一ヶ月。彼もまた三十代へと足を踏み入れる。


あいつは、まあ。見た目通りだよなあ、なんて思うけど。


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