34話 ページ35
かな
初めは出来心だった。
不倫漫画や、浮気漫画であるような…あのスリルやドキドキはどんなものなんだろう。と軽く考えていた。
やってみたいな…そんな軽い気持ちでやろうと思った。
まぁ、既婚者なら誰でもよかった。
かな「…この後…空いてますか？」
少しずつ、少しずつ距離を詰めていき…奥さんへの不満をこぼしてもらえるくらいに仲良くなった頃に太ももに手を這わせながら、上目遣いをすれば男はコロッといく。
漫画で読んだ女の心情そのままに同じことをした。
その男はすんなりと私の手に自分の指を絡めながら会計を済ませて近くのホテルを紹介してきた。
「じゃ、また飲もうか」
そう言って手を振りながら自分の家であろう道を進む。
かな「…こんなもんか」
別にあの男の指に光る指輪を見てスリルを感じるわけでも、ドキドキもハラハラも何も無い。
ただ単に、『思ってた以上につまらない』が感想だった。
わたしも家に帰ろうとすれば、
紫耀「やばいね、不倫じゃん…あんなにいい人いるのに。」
かな「…なに？」
私の肩に手を回してホテルから出てくる写真を何枚か見せられた。
さっきの写真だって言うのはすぐに分かるし、とぼける訳でもない。
紫耀「楽しかった？」
かな「別に、こんなもんかー、って感じ…ばら撒きたかったらばら撒きなよ。私別にいいし、彼氏がいるわけでも結婚してる訳でもないし……まぁお金取られるかもしれないけどそれなりに覚悟してたし」
紫耀「いや、別に脅したりはしてないただ____」
目の前に現れた顔の整ってる男が話すこれからの話が面白そうで、楽しそうで……漫画なんかよりも、ただの浮気なんかよりもワクワクすると思った。
かな「なにそれ、乗った」
紫耀「ふは、お前相当狂ってるね」
かな「いや、あんたよりはマシでしょ」
私は多分こいつに乗って正解だと思う。
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作者名：優希
| 作成日時：2023年1月3日 14時
