第60話 ページ10
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フリッガの葬式は国を挙げて行われた。
後でソーやジェーンから聞いた話だが、彼女はジェーンを
守るために戦い勇敢な死だったと言う。
オーディンはいつもと変わらないように見えたが、国から誰も出すなとビフレストの使用を禁止した。もちろんAも例外ではない。
『オーディンはまだ冷静じゃないわ。』
「だからなんだ。私には関係ないだろう」
地下牢にいたロキにも、すでに事情は伝わっていた。
しかし彼はフリッガが亡くなったにも関わらず平然としている。
『貴方はどうなの…?
フリッガを愛していた貴方は、今何を思っているのか教えて…隠さないで見せて』
「別に、私は」
『強がりはやめて。ロキ、お願い』
するとロキのいた牢屋の中の様子がガラリと変わり、小物のインテリアが散らばり荒れていた。余裕あるロキは消えて、本物は少しやつれたように壁にもたれ掛かっていた。
その様子に何故か安心して、涙が込み上げた。
「泣き顔も、案外悪くないな…」
初めて互いの弱っているところを見た。
この涙だけは偽りなんかではない。ロキもAも深い悲しみに暮れていた。
『ごめんなさい、守れなかった』
その言葉に、今度はロキが瞳をうるわせた。
手で目元を隠して押し黙る。
そんなことをしたって溢れる涙を隠せるはずなんてないのに、ロキは声さえ抑えるように唇を噛み締めた。
先に泣き止んだのはロキだった。
Aはいまだ油断すると涙が出てきてしまう。すると、ソーが地下牢へとやってきた。2人の様子に少し驚きながらもソーはロキに話しかけた。
「母上の最後を話しに来たか?」
「悲しみを分かち合いに来た訳じゃない。
お前に弔いのチャンスを与えてやろうと思ってな」
「……聞こう。」
「仇を打ちたい気持ちはお前も同じだろう。アスガルドを出るのを手伝えば…復讐を、遂げさせてやる。その後牢に戻る」
「私に助けを求めるとは……私を信じるのか?」
「信じてないが…母は信じた」
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作者名:ゑもん | 作成日時:2023年12月26日 12時