断片的な記録2【MCU】 (ページ9)

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第５９話ページ9

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それは突然のことだった。
アスガルドの周りを彷徨いていたならずもの達が、連れられた地下牢を抜け出して暴れ始めたのだ。

それだけではない。空からは突然戦闘用のビーグルが現れて、罪のない一般人のいる街までも攻撃し始めた。

『逃げなさい……！！』

この事態にAも待女を連れて応戦した。
王宮の方は兵士がいるので、国民の避難を優先した。

「陛下！！王宮のバリアが完全に起動していません！」

王宮を取り囲むバリア装置の核は内部にある。
そのバリアが途中でなくなってしまった。それは王宮内部がすでに敵の手の内であることを意味している。

『フリッガ、ジェーン…』

その瞬間、ひとつの戦闘機が王宮に突っ込んだ。
Aは居ても立ってもいられず、翼を広げた。

王宮についたAは敵を倒しながらフリッガの部屋へと急いだ。敵の狙いはエーテルであり、それは今ジェーンの中。そしてジェーンはフリッガと一緒にいるはずと踏んだのだ。

「よせぇぇええ！！」

ソーの叫びと雷鳴が聞こえる。
ひどく耳が痛くなるような音だ。

半ば体当たりのように部屋の扉を開けたAの視界に広がったのは、荒れた部屋だった。

『そんな』

途中で拾った剣を手から落として、Aはおぼつかない足取りで床に倒れるフリッガに近寄った。

『フリッガ、貴方まで悪い冗談はやめて…
お願いだから、お願い……』

フリッガはひどく弱った様子でAに優しく微笑んだ。そしてフリッガをこんなふうにした敵を追っていたソーが戻ってくると、彼にも同じように視線を送る。

「約束…お願いね」

『いやよこんなの…フリッガ』

「貴方を娘のように愛してる」

フリッガの手がAの頬を撫でた。
いつの間にか隣にはソーがいて涙を流していた。そんな彼にも震える声で愛を囁くと、ようやくオーディンが到着した。

「あなた…」

Aはソーの肩を抱いて、その場から引いた。
最後くらいは夫婦水入らず邪魔をしてはいけないと思った。

オーディンは眠ったフリッガからしばらく離れようとしなかった。そうして彼女の優しさに溢れた人生は幕を閉じたのだった。