第58話 ページ8
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「A、来たのですね」
フリッガの部屋に立ち寄ったAだったが、部屋の主は人知れず涙を流していた。
『ロキに、何か言われたのでしょう…?
でも気に病むことはないわ。あの子はただ自分の気持ちがよく分かっていないだけだから…』
「ええ、それは私もよく知っているわ。」
「でもね」フリッガが涙を拭いてAをみた。
「母ではないと言われることが、あまりにも辛いの。」
『フリッガ…』
あまり弱味を見せなかった彼女が、ロキのことで心を痛めていたのは確かだった。座り込むフリッガをAは支えるように抱きしめた。
「でも貴方がいてよかった。
私は息子たちの面倒を最後まで見られないもの。その時は、ロキのことを頼みます。良き理解者である貴方に。」
フリッガが自身を支えてくれているAに寄りかかった。「もちろんソーも」とフリッガは笑った。
『私にあの2人の面倒役は務まらないわ。いくら手があっても足りなそうだもの。』
「そういえば、ソーは今どこに?ミッドガルドから友人が来たと聞いたのだけれど」
『彼女はジェーンと言って、むこうでソーがお世話になった人なの。きっとアスガルドを案内しているのだと思う。』
するとフリッガの表情がまた変わった。
今度はどこか神妙な顔つきだ。
「彼女にはエーテルが宿っているとも聞きました。
これも惑星直列の影響なの……?」
『そうかも知れないわ。さっきエーテルとダーク・エルフの伝承をオーディンから聞いたの。』
固体にも液体にもなる真紅の石エーテル。それはあらゆるものを暗黒物質へと変えてしまう危険なものだった。
ダーク・エルフを従えていたマレキスが、過去にそれを悪用しようとしていたらしいが…
『似た石の伝承が、私の国の書庫にあったのを思い出したの。でもあれは赤ではなくオレンジのようだった…』
「オーディンに聞く他はありませんよ」
『そう、よね…』
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作者名:ゑもん | 作成日時:2023年12月26日 12時