第56話 The Dark World ページ6
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ソーはオーディンに与えられた命に、今までよりも懸命に務めた。その結果、彼は誰の期待も超える速さで混乱や争いをおさめたのだ。
Aは昔のようにアスガルドへ訪れてはフリッガのもとに時々立ち寄り、ロキの牢生活に顔を出すようにしていた。昔のような素直さはもうないがロキは自身のところへ訪れてくれるAに、また心を開き始めていた。
そしてヴァナヘイムから帰ったソーの報せは、ヘヴンにいたAの耳にも届いていた。
「今頃あちらでは祝賀会を行なっている事でしょう」
『そうね。みんなお酒が好きだから…』
宴会の様子を思い浮かべて笑うAを見て、側近の女は思わず胸に秘めていたことを口から漏らしてしまった。
「ヘヴンを出てはどうですか」
『……え?』
「あ、いや…」
バルコニーにいた2人に冷たい風が吹いた。
女は自身から出た言葉に驚いたのち、意を決したように開き直った。
「私は陛下に、国に囚われず自由に生きてほしいのです」
『それは…
私に国のことを放棄しろと言っているの?』
「極端にいうと、そうなります」
Aは笑った。
いつも真面目な女が、自分にそんなことを言う日が来るとは思わなかった。
『気にかけてくれて嬉しいわ。でも、すでに自由にやらせてもらってるつもりよ。私すぐどこか飛んでっちゃうし』
「しかし……まだ何か我慢されているように見えます。自分を抑えずに、心までも自由に生きてほしいのです。
それが、私たちの」
その瞬間、彼女の言葉を遮るようにヘイムダルから「ジェーンが消えた」と2人へ交信があった。
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作者名:ゑもん | 作成日時:2023年12月26日 12時