第５４話 ページ4
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「彼女は聖なる力で民を導いていく途中、男たちのボスとも出会った。それが」
「Aの父親」
ノアは頷いた。
Aの父親は最初こそ対立していたが、Aの母親の優しさに触れて惹かれたのだという。
「2人は力を合わせて、これまでのヘヴンとは違う新たな国を作ろうとしたんだ。愛に溢れる国さ。戦いも、争いも、憎しみもない国。
そして愛を知らなかった男が、初めて好きになった女と愛を育んで産まれた子がA様だ」
「今日この街を見たところ、その望みは叶ったみたいだな」
「そうとも言えるね。ヘヴン人は他の種族との交流をし始めて、いつしかその血は凶暴な力も、翼もなくなるほどに薄まった。アスタエル一族を除いてね。
この国では血が濃く残っている、羽のある人ほど力が強いんだ。だからA様はこの国で一番強く頂点におられる。」
Aの背中の翼にそんな裏話があったとはつゆ知らず、ソーはただただ感心するばかりだった。
「だけど、父親はA様が生まれてすぐ後に亡くなり、母君も…」
それからはソーも知っていた。
直接Aから聞いたことがある。
「あんたの彼女は王宮で働いていて、翼が生えてると言ったね。」
「そうだ。」
「A様に会いたいんだろ。この国で翼が生えてるのはもう女王陛下かアラゴーンしかいないよ」
図星で少し戸惑うソーに、ノアは優しく笑いかけた。
「いいことを教えてあげよう。
夜になったら宮殿の近くの高い丘へ行くといい。A様が時々そこへ顔を出すんだ。」
「なぜ俺にそこまで話してくれるんだ？それに、なぜそれを知ってる」
「私も昔は陛下にお仕えしていた身。今は引退して、娘が彼女の側近をやってるのさ。ソー、アスガルドの王子。あんたがまだ幼い頃に見たことがある。
A様をどうかよろしく頼むよ」
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作者名：ゑもん | 作成日時：2023年12月26日 12時
