第75話 Restart ページ25
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「じゃあ彼女とは連絡とってないの?」
「まあ…そうだな。
とってないというより、邪魔をしないよう気を利かせてるんだ。彼女は忙しい人だからな。」
そう話しているのはソーと同居人のダリルだ。
ジェーンやセルヴィグの勧めで、ソーはオーストラリアに住むことにしたのだ。ミッドガルドをもっと知ろうとする彼にとって、そこは新しいことばかりだった。
「彼女とは幼い頃からの付き合いだった…
よく遊んだ。しかしある時から来なくなってしまった」
「へえ…」
ダリルはキッチンで食器を洗っていたので、ソーの話を半分ほど聞き逃していた。
「なぜ続きを聞かない?」
「いや、家事をしてる」
「家事はいつでもできる。だが俺の話はいつでも聞けるとは限らないぞ。ん?」
キッチンカウンターに寄りかかるソーの言い分に渋々頷きながらも、ダリルは食器洗いを再開した。
「コレは後で聞いたんだが、弟が彼女の羽根を切り落としていたらしい。平気なフリをしてきっと心に傷がついてしまっていたんだろうな」
「羽根?彼女は鳥かなんかか?」
「女神だ。お前も一目見たら驚くぞ。
彼女はとても美しい。」
すると誰かが窓を外からつつく音がした。
2人が外を見ると、紙を咥えたカラスが窓をくちばしで叩いているのが見えた。
「なんだあのカラス」
「彼女からだ…!」
ソーは喜んだ様子で窓を開けると、手慣れた様子でカラスを腕に乗せた。
「おいソー…!早くそいつを追い出してくれ!
へんな病気とかあったらやばいぞ」
しかしそんなことは気にも留めず、ソーはカラスの持っていた手紙を広げて読み始めた。
「ロキの杖が…?そんなまさか」
「なんだ?どうしたの?」
「ロキの杖が見つかったらしい。
あれは強力だからな。アスガルドへ持って行かなければ」
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作者名:ゑもん | 作成日時:2023年12月26日 12時