第７３話 ページ23
．
「思い出したか」
「お前など知らん！」
「バッキー、ずっと一緒だった。
お前の名はジェームズ、ブキャナン・バーンズ」
「だまれ！」
「お前とは戦えない、友達だ」
崩れてゆくヘリキャリアの中で、スティーブとバッキーだけが中に残っている。スティーブは盾を捨て、一方的に殴られるだけだ。
「任務を遂行する！お前を！消すのが！任務だ！！」
「なら終わらせろ…。最後までとことん付き合うよ」
ありがとうバッキー
でもひとりでやっていける
そうはいくか 、1人じゃない。
最後までとことん付き合うよ
その瞬間、2人の乗っていたヘリキャリアは本格的に崩壊し始めた。あちこちで爆発が起こり、ついに2人も下の川の中へと放り出された。
『スティーブからの応答がない』
「ちょっと！今飛び出したら、降ってくる瓦礫に貴女まで巻き込まれるのよ」
ナターシャの言葉に一瞬怯んだAだが、意を決して乗っていたヘリを飛び出した。
一方で、川に放り出されたスティーブはなんとか息があるものの意識はない。そんな彼を岸まで引きずり上げたのはバッキーだった。
『ば、バッキー…』
ハァ、ハァと肩で息をしながらもAは2人を見つけ出した。2人の様子からバッキーが記憶を取り戻したらしいことを察する。
『どこへ行くの。やっと会えたのに…』
「分からない」
ウィンターソルジャーとして洗脳されていたとは言え、彼は罪のない人間を何人も殺してきた。バッキーには静かに過ごす時間が必要だ。
Aは暗い顔でうつむく彼の頬を両手で撫でたあと、心の痛みが少しでも癒えるようにと抱きしめた。
「A…」
バッキーも抱きしめ返したところで、辺りが騒がしくなってきた。どうやら警察も動き出したようだ。
『これ、受け取って。
きっとあなたを守ってくれるはずよ。』
Aは例のネックレスを「渡すのが遅くなってごめんなさい」と言葉を添えてバッキーの手のひらに乗せた。
『絶対、また戻って来て。』
「いつになるかは分からない」
『大丈夫。時間はまだまだ沢山あるわ。』
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 30人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ゑもん | 作成日時：2023年12月26日 12時
