第53話 Heaven ページ3
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「ヘヴン…」
「こ〜らあんた達、そろそろ部屋に戻りな。
この人は旅で疲れてんだから」
女がそう言うと、子供たちは素直に聞き入れた。ソーに遊んでくれてありがとうと手を振って戻ってしまった。
「可愛い子供たちだ。それに愛国心にあふれて」
「あんた、只者じゃないね。」
先ほどまで和やかだった女が冷たく言った。
ソーは一瞬驚いたものの、あくまで平然を装った。
「まあただの、旅人だが?」
「うちの子たちにヘヴンの事を色々聞き出そうとしてるじゃないか。特に王宮のことをやたらと知りたがる」
気づけば店内にいるのは女主人とソーだけだった。
「あんた王宮に行きたいんだったね。
よければ話を聞かせてくれないかい」
2人は同じテーブルで話をした。彼女の名前はノア。
聞けば一番上の娘が王宮で働いているらしい。
「ヘヴンでは女男が100対1の割合で生まれる。そういう理なんだ。だから男がいると物珍しくて疑い深くなっちまう。許しておくれ」
「平気だ気にするな。俺も初めてここに来たものだから、早く彼女に会って安心したいだけなんだ」
「おやお熱いこと。で、何が知りたい?」
「何でもいい。今までずっとヘヴンという名すら知らなかったのだからな」
ノアは「じゃあ…」と王宮について教えてくれると言った。ソーの彼女が王宮で働いていると嘘をついたからだ。
「女王陛下が誰だか分かるかい?」
「A。A・アスタエルのはずだ」
「おお、それは知ってるんだね。当たりだ」
ソーをはそれを聞いて安心した。Aの名前すら違っていたらどうしようと思っていた。
「ここは遥か昔、荒くれ者の集まりの住む国だったんだ。国民のほとんどが女でありながら力も強く、戦いを好む種族でね。当時はみんな背中に翼が生えていた」
「今は違うのか?女王にはついているようだが」
「まあ待ちな。
当時世界は9つではなく10あった。ヘヴンがあったからね。しかしその危険性からオーディンを始めとする他の神々が世界を切り離し、存在を隠したんだよ。
そんでもって男が少ないもんだからよく女と内戦しててね。でもあるとき、1人の女性が現れたんだ。ヘヴン人にしては穏やかで心優しい清らかな心の持ち主さ。」
「まさか、それが」
「それが先代女王、A様のお母上さ。」
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作者名:ゑもん | 作成日時:2023年12月26日 12時