第67話 ページ17
_____ワシントンDC
「肺を変えてくれよ。
あんた20キロをたったの30分で走ったな」
「そうか、おそすぎるな」
「まじか…そいつは残念だったな。もう一周してこい」
スティーブの「左失礼」から始まった2人の奇妙なジョギングが終わった。
「サム・ウィルソンだ」
「スティーブ・ロジャース」
お互い軍人経験がある事もあり、2人はすぐ意気投合した。話は思いのほか盛り上がったが、スティーブの携帯に連絡が入った。
「任務が入った。お疲れ」
「退役軍人省に寄ることがあったら教えてくれよ。受付の女の子に自慢したいから」
「覚えておくよ」
すると黒い車が2人の横に停まった。ナターシャだ。
「ねえそこの人、スミソニアン博物館どっち?
化石を送りに来たんだけど」
「よく言うよ」
スティーブが助手席に乗ると、ナターシャが顔を覗かせた。サムと互いに挨拶を交わすと彼女は車を出した。
しばらく両者は黙っていたが、赤信号に引っかかったところでナターシャが口を開いた。
「Aが行方不明なの」
「なに?」
「ダレス空港を出たのは確かなんだけど、途中の道で事故を起こしたみたい。」
「無事かも分からないのか?」
「あの子のことだから、それくらい大丈夫だとは思うけど……運転席のドアが壊されてた。」
何もないところで事故を起こすはずがない、車体には事故のものじゃない傷もあった、とナターシャが事件の不審な点を次々と口にした。
「待て。なぜ人の手でドアが壊されたとわかるんだ。事故で外れただけかもしれないだろ」
「手の跡がついてたの。ドアが歪むほどの力で握られてできた、手の跡が。」
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作者名:ゑもん | 作成日時:2023年12月26日 12時