第52話 ページ2
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ソーが街へ降りると、人々は祭りの準備で忙しそうにしていた。そして何より気になったのが住民の男女比だ。
ウネルマへ来てからソーは、男性を手で数えられるほどしか見ていない。
「旅人さん、うちの店で一杯どう?」
「いや大丈夫だ。
それより、宮殿へ行くにはどうしたらいい」
ムジョルニアを持って来ているので空を飛んではいけるが、門番がいる以上強行突破はできない。
「なんだお兄さん、城に彼女でもいるのかい」
「まあそんな所だ」
「だったら今はやめときな、女王様が帰って来て宮殿は今ごろ大忙し。相手にしちゃくれないよ」
酒場の店主らしい女性が親切に言ってくれた。
しかしソーは諦めるわけにもいかず、「どうにかならないか」と伝えた。
「…それなら夜しかないね。日が暮れれば落ち着きもするだろう。」
「親切にありがとう。
……少しの間酒場にいてもいいだろうか」
「もちろん。子供達もいるけど気にしないでおくれ」
気前の良い女は店にソーを招き入れると、キッチンに戻って仕事を始めた。まだ日中ということもあり、人はあまりいなかった。その代わり子供が何人か店内を駆け回っている。全員女の子だ。
「ママ、男の人が来たよ!」
「お髭が生えてる!」
「その人はお客さんだよ。失礼のないようにね」
やはり男性が珍しいようで、子供たちは恐るおそるソーに近づいてはキャッキャと後退りして楽しんでいた。
「おじさんどこから来たの?」
「アスガルド?」
「ヴァナヘイムかもしれないよ」
「俺はアスガルドから来た。」
それから会話をしていくうちに子供たちはソーにすっかり懐いてしまった。料理を食べ終えた後も、ソーはしばらくそこに残って子供達からこの国のことを教えてもらった。
「アスガルドではここはウネルマと呼ばれている。夢のように素敵な国という意味を込めてな。」
「違うよ!ウネルマじゃない!」
「そうそう」
「では何と言う?」
ソーの膝の上にいた子供が自慢げに言った。
「ヘヴン」
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作者名:ゑもん | 作成日時:2023年12月26日 12時