第51話 ページ1
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「ははっ……なんてことだ」
ゲートを抜けると先ほどの場所とは打って変わり視界が開けて、目に入って来たのは自然と共存した美しい街並みだった。
そして街の奥の上空には、雲の上に宮殿が浮かんでいた。Aがそこにいるのは間違いないだろうが、ただソーが今いる場所はその街から完全に離れている。
「そこのお人、馬車に乗っていくかい?」
「ああ!感謝する、ご老人…」
御者である男性の老人が声をかけてくれたので、さっそく車体に乗り込もうとすると、縄で繋がれた馬に驚いた。
馬は白く美しく、その背中からはAのものと似た翼が生えていた。俗に言うペガサスのようだった。
「アラゴーンを見るのは初めてかね?」
「ああ。スレイプニルは見たことあるが、これは初めてだ」
「もしやアスガルドのお人だろうか。
あそこの王様がスレイプニルに乗っていると聞いたことがあってね。」
「ここにはアスガルド人が来ることもあるのか?」
「あるとも。昔に比べて随分と増えた。」
しかしソーには理解ができなかった。
Aの国へ行くことは基本アスガルドの民はもちろん、王子であるソーも禁止されていたからだ。
「アスガルドへ行った民が婚約して、ここへ戻ってくることが多い。貴方もそれで来たのではないのかね?」
「いや、旅の途中に立ち寄ったんだ」
すると宮殿からパァンと一つ花火が上がった。
「おお、こりゃあいい時に来られた」
「あの花火はどんな意味が?」
「女王陛下が戻られたのだ。
数年はビフレストが使えずに、ミッドガルドにいたらしいからのう。」
老人はそんな事はしょっちゅうあると言って、花火が上がると街は祭りを開くのだそうだ。
「あの宮殿まで行ってくれ。」
「わしはゲートから街の手前まで送るのが仕事。
旅のお方、空の宮殿へ行くには門番の許可が下りないといかん。たとえアスガルドの王子でもな」
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作者名:ゑもん | 作成日時:2023年12月26日 12時