卒業。1 ページ3
まだ肌寒い春の昼下がり。
校庭を埋め尽くすほどの桜が風に揺られて。春の足音と共にやってくる。
今日、先輩が卒業するんだ。
朝起きてカーテンを開けて、胸いっぱいに春の空気を吸った時に、ふと実感した。
春がこなければいいのに。
春は出会いの季節でもあれば、別れの季節でもある。
あの、眩しいくらいの笑顔の先輩をもう見ることはないんだって。
そう思ったらたまらなく悲しくなる。
春を恨んでしまいたい。
春が先輩を連れていってしまう。
制服の袖をとおして。
学校へ向かえば既に卒業式の準備は出来ているらしく。先輩方の親御さん達が清々しいような表情で問をくぐっていく。
私は受付で先輩達に花で彩られた名札を手渡していく。
大好きな先輩へ渡す手が微かに震えた。
これを渡してしまったら、もう先輩は行ってしまうんだ。
まだ、何も言えないまま。
この、喉にでかかっている言葉を言えないまま、
本当にそれでいいのだろうか。
これでいいのかもしれない。
言ったって先輩を困らせてしまうだけだ。
そう、思っていても、この溢れる「好き」に蓋なんて、できない。
震える手で精一杯の笑顔で「おめでとうございます、先輩」そう言って先輩の胸もとに名札をつけた。
こうやって、当たり前のように先輩に触れることができるのも。これで最後なんだって思うとたまらなく死にたくなる。
困らせたくない。でも好き。
大好き。
こんな私をどうか許してください。先輩
何も知らない先輩は嬉しそうな顔で私にありがとうと言った。
その声も、姿も。感じることができるのも。
これで最後。
悲しいような、心から喜びたいような、あやふやな心のまま卒業式に出席した。
紙で作られた花の門をくぐる先輩を一目見ただけで泣きそうになった。
鼻の奥が痛い。
長ったらしい校長先生の話だって、私たちには当たり前のことだけれど、先輩にとってはこれが最後なんだなあと考えると。また泣きたくなる。
最後の卒業生の歌のとき。
本当にいなくなってしまうようで、耐えていた涙があふれそうで。体育館を抜け出した。
先生に気分が悪いと早口で使えると。その場を走って先輩の教室へ向かった。
ガラッと大きな音を立てて教室の扉を開けると、黒板には大きな文字で「卒業おめでとう」と書いてあった。
先輩が使っていた机の前に立つと耐えていた涙が一気にあふれ出た。
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ロサ・ラピスラズリ(プロフ) - YUKARI♪さん» ありがとうございます!! (2019年11月16日 10時) (レス) id: 18eae7edc1 (このIDを非表示/違反報告)
YUKARI♪ - なんか…言葉では言い表せませんが……心に残りますね…この作品好きです! (2019年11月16日 10時) (レス) id: ac04f3e538 (このIDを非表示/違反報告)
?紅林檎?(プロフ) - 魔月@ゲーム実況者同盟(元yuri)∞?さん» ありがとうございます!! (2019年10月22日 18時) (レス) id: 18eae7edc1 (このIDを非表示/違反報告)
魔月@ゲーム実況者同盟(元yuri)∞?(プロフ) - 好きです……何て言うかその……全部が (2019年10月22日 18時) (レス) id: a4b6751794 (このIDを非表示/違反報告)
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