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渡せない恋文。三通 ページ3

金木犀の君へ

嗚呼、ごめんなさい。
あんまりだわ。あんまりだわ。

お父様が勝手に婚約を結んでしまいましたの。
明日顔を合わせにいらっしゃるそうだわ。

嗚呼、あんまりよ、
私は密かに恋をする乙女でございますのよ。
一途で甘い乙女でございますの。

政略結婚なんてロマンスの欠片もございませんわ。
迸るような鼓動も、バラ色に染まる頬も。
金木犀の君だからこうなるのですわ。

政略結婚なんて、形だけの結婚は愛も何もございませんことよ。
あんまりだわ。
私はあんまりよと枕に顔を埋めてシクシク涙を拭う事もせず流し続けておりましたわ。
ようやく落ち着いてきたので万年筆を手に握り、この恋文を書いておりますの。

お父様は家柄や地位の事しか考えていないのだわ。
純粋な乙女にはなんの権限もございません。
嗚呼、なんて可哀想なのかしら。

私にはお慕いする方がおりますのに。
ずっと、永遠に片思いを続けるつもりでしたのに、


嗚呼、金木犀の君、
私は貴方様をお慕いしております。
なのに、片思いすら許されないのですわ。
知らない殿方のお隣を三歩下がって歩いて、着飾って恥ずかしくない妻として、子を産み、家庭を守り、夫の言う事はどんなことであろうとも従い、夫より学を持たず、鳥籠に閉じ込められる運命なのですわ。

「あの花はなんていうのかしら、分からないけれど、それより妻としてご奉仕しないとですわ」
大方、考えていいのはこれ位かしら。

男尊女卑がまだ、色濃く残っておりますから。

妻として、与えられたものを食べ、選ばれた装飾品を身に付けて、養われて、
まるでペットじゃありませんこと?

夫無しじゃ、外にも出られないのだわ。

でも、ご安心してくださいまし、
お身体を差し上げてしまっても、この、穢れなき乙女の心は金木犀の君にしか差し上げませんわ。



そうよ、私の心は金木犀の君に差し上げておりますもの。
何も恐くなんてないわ。

私は強いのよ、

金木犀の君はきっと、許してくださいますわよね?

穢れなき乙女は信じておりますわ。

女学生より

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設定タグ:オリジナル , 手紙風 , 短編小説   
作品ジャンル:恋愛, オリジナル作品
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ロサ・ラピスラズリ(プロフ) - するふぁ@givehappinessさん» ありがとうございます!! (2019年10月28日 7時) (レス) id: 18eae7edc1 (このIDを非表示/違反報告)
するふぁ@givehappiness(プロフ) - あ、すき。うまく言えないけど、すき。 更新頑張ってください。応援してます。 (2019年10月28日 2時) (レス) id: 7f5dee56dd (このIDを非表示/違反報告)
ロサ・ラピスラズリ(プロフ) - Noel*26さん» ありがとうございます!!手紙風に書く小説ってあまり見かけないなあっと思って書いたのですが、喜んでとらえて良かったです。 (2019年10月27日 9時) (レス) id: 18eae7edc1 (このIDを非表示/違反報告)
Noel*26(プロフ) - なにこれ、なんなのこれ、めっちゃ好き。応援させて下さい( ^ω^) (2019年10月27日 9時) (レス) id: 3a6dfc07f6 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ロサ・ラスピラズリ | 作成日時:2019年10月26日 16時

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