二人の世界が始まる(2) ページ3
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「ケーキ買っていい?」
「えっ」
彼女の有無は知らない。でも、菊池くんのことならこのあとの予定があったとしても何も不思議じゃない。
「打ち上げ兼クリスマスパーティーなのにチキンもケーキもないんだって。ただでさえ彼女ナシ男5人でむさ苦しいってのに……」
「そ、そんなこと……」
「でも可愛いサンタさんに会えてラッキーかも」
……ズルい、ズルすぎる。これで何もないとかだったら私怒っていいと思う。
「ちょうど頂戴します……」
「うわ、つめた!」
お金を受け取る際にちょっぴり触れた手……そりゃ寒空の下どのぐらいここに立ってると思って……。
「こんな寒いのにおつかれさま。あ、まだ飲んでないからあげる。俺からのクリスマスプレゼントってことにして」
自販機で売ってる缶のコーンポタージュ。買ってしばらくたってたのかも。あたたかさが冷えた指にちょうどいい。
「鼻も赤くしちゃってさ……あ、」
自分のマフラーを外したと思えば 私の首にふんわり巻き付ける。一気に近づいた菊池くんのにおいに全身の血液が沸騰しそうだった。
「貸してあげる」
……タグでわかる、これ私が使ってるようなお安いやつじゃない。こんなの、誰にも貸すとかしないでしょ?自惚れちゃうけど、菊池くんが悪いよね。
「……ありがとう」
「あのさ、……もう冬休みじゃん?」
「うん?」
「だから、正月とか……やっぱりなんでもない」
軽く手を振って、別れようとする。
都合よく、コンビニ前を通る人は誰もいないから、思わず菊池くんを大声で引き止めた。
……だって、週末からまたグッと寒くなるでしょうってママから聞いたような気がするの。……だから、始業式まで会えないなんてやだ。
「冬休み、良かったら……!」
マフラー返すのはもちろんだけど、学校がなくてもあなたに会いたいの。
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作者名:ゆき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2023年12月24日 21時