これだから風磨くんは。(短) (ページ2)

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二人の世界が始まる(1) ページ2

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「ケーキいかがですか～……」
「ちょっと！もっと元気よく売ってくれない！？」
「そんなこと言われても……店長、みんなケーキなんてこんなコンビニじゃなくていいケーキ屋さんの予約してるんですよ」
「こんなとか言わないでくれる！？」

……だってそうでしょ。25日に駆け込みでしかもコンビニケーキなんて何もロマンチックじゃない。結局当日だって、恋人がいない私からすればバイトに入るしかないんだもの。愛する相手がいるみなさまはこぞって休み希望出すわけだし。

チープなサンタコスして、わざわざ寒空の下店先に立つなんて、一体なんの公開処刑？はやくぜんぶ売れてほしいけど、もっと値下げしなきゃ廃棄になるかも。あー、でもはやくぬくぬくな店内入りたい、売れてくれないかなー。

バイトに呼ばれて、店長は中に入っていっちゃった。2人ならまだしも、1人はキツい。こんなとこ知り合いに見られたらおしまいじゃない。

……来年こそ、好きな人と過ごしたいな。例えばそう、同じクラスの……。

「あれ、Aちゃんだ」

あたたかそうな緑のマフラーをつけ、背中には大きなギターケース。そっか、軽音楽部はクリスマスライブとか言ってたっけ。

「き、菊池くん……」

さ、最悪！知り合いに見られませんようにって祈ってたのに、よりによって同じクラスの菊池くんに見られちゃうなんて。

青と白のストライプが特徴の制服の上から、赤いケープと申し分程度のお帽子を付けただけの簡易サンタコス。せめてもう少し可愛いカッコで……とか、勤務時間がはじまってから一切気にしていなかった前髪を急に確認したくなる。

……なんだ、(けっ、クリスマスなんて……)とか思うようにしていた私にも、まだ可愛いところがあるんだと心の中で思った。

中年の中途半端なサンタを見てたから？それともクリスマスマジック？それとも……

「なにそれサンタ？かわいいじゃん」

……単純すぎるなんてわかってるよ。お世辞でも、好きな人からの「かわいい」なんて、嬉しいに決まってるもん。