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･
「……っ、」
ぎゅう、って
細い腕に引き寄せられるまま
薄い胸板にもう一度ダイブ。
意外と、力は強かった。
「……Aちゃん」
優しく私の名前を呼ぶ、その声に
長距離走の直後みたいに
心臓がはやく動いてる。
でも、私と同じくらい
勝利くんの心臓だって
ものすごくドキドキしてた。
それが、どうしようもなく嬉しかった。
力強く、でも、優しく
私を抱きしめる彼の腕の中は
恥ずかしいのに、心地よくて。
「すき、Aちゃん」
私が何よりもほしかった言葉。
唯一ほしかった言葉。
ウワサじゃなくて、
勝利くんから……。
「だいすき」
そうなのかな？なんていう疑問が
ようやく確証へと繋がる。
「私も、だいすき……っ」
ずっと両片思いだったんだ。
綺麗すぎて、勝利くんと私はつりあわないって
まわりに思われちゃうかもしれない。
でもいい。
勝利くんのくれた言葉が
私の自信。
好きな人に好きって言ってもらえる
こんなに幸せなんて、知らなかった。
･
「……見られてるなんて思わなかった。今までの努力、水の泡」
「努力……？」
「Aちゃんの前ではすごい優しい男でいようとしてたし、言葉遣いだって……
誠実で優しそうな男を演じきりたかったのに」
偽るのは、疲れちゃうよね 。
「優しい勝利くんも、いじわるな勝利くんも、すきですよ……？」
ついこぼれてしまった言葉。
勝利くんが目を丸くして
乱雑に、私の頭を撫でた。
「……ずるいね、Aちゃん。
Aちゃんって小悪魔だよね」
「それはこっちのセリフです」
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作者名：ゆき
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2017年10月22日 0時
