13《F》 ページ13
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それは俺の中の古い記憶、
美しかった女性が豹変した姿だった。
『お前さえいなければ……!』
俺に向けられた瞳には、憎悪だけが込められていた。
「……っはぁ、」
この夢をみるのは何度目だ?
成人してもまだこんな記憶に囚われているなんて情けない。
「……風磨くん、?」
すぐそばで眠るショーリが もそりと身体を起こそうとする。
「悪い、なんでもない。寝てていいよ」
何度か毛並みにそって黒いからだを撫でれば すぐに規則正しい寝息が聞こえてきた。
ひとつため息をこぼして、そっとベッドから抜け出す。
水でも飲もう。そう思って外に出た。
…………ん? とっくに日付は変わっているのに 図書室の明かりがついたままだ。
消し忘れかと思って足を踏み入れると
そこにはあの女がいた。
「……こんな時間まで何してる」
「風磨さま?……え、何時!? マリウスも寝ちゃってる……。あー、ごめんなさい……ここ何時までとかありました……?」
「ないから別にいいけど」
机の上に置かれた何冊かの本。俺は触れたこともない物語だった。
なんとなく、隣に座ってみる。
「面白かった?」
「なかなか奥が深かったです。これが子どもにだけ見える、森に暮らす生き物の話で……こっちは帰り道をなくして大浴場で働く話で……。
風磨さまはどんな話がお好きですか?」
「俺?何も読んだことないよ。娯楽なんて、意味がないと思ってたし 、……必要ないと与えられてこなかったから」
……こんなこと言ってもつまらない奴だと思われて終わりだ。気まぐれに話しかけるんじゃなかった。
「そっか」
何を思ったのか、女はそっと俺の頭に手を伸ばした。
「ずっと 国のために頑張ってきたんですね」
そんなこと言う奴、はじめてだった。
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ゆき(プロフ) - ゆいさん» 中身が実はかなり誤字まみれなのですがそう言って貰えて嬉しいです(TT)これからもいろいろ書いていくのでよろしくお願いします(*ˊˋ*) (2022年6月13日 21時) (レス) id: d091d9d96a (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - あやさん» コメントありがとうございます!ファンタジー要素強めなメルヘン系書くのがだいすきなので、そう言っていただけて嬉しいです(っ´;ω;`с ) (2022年6月13日 21時) (レス) id: d091d9d96a (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - ミニトマトさん» マイペースな更新ですが、頑張りますのでよろしくお願いします(*´ω`*) (2022年6月13日 21時) (レス) id: d091d9d96a (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - ゆきさんのCCの本私も欲しいです〜泣 ゆきさんのお話は全部読みました!全部大好きです! (2022年5月20日 23時) (レス) @page48 id: 69bd512447 (このIDを非表示/違反報告)
あや(プロフ) - 初めまして。ゆきさんの書かれるメルヘン風磨が大好きで何度も読み返しちゃいます!また楽しみにしております✨ (2022年4月30日 11時) (レス) id: b466031afb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2021年12月16日 21時