先輩、俺じゃダメですか？ Fuma.K

09 ページ9

･



｢もぉ、どうしたらいいんすか？まじで｣
｢菊池ってほんとにアイツのこと好きだよね｣
｢…………好きです｣
｢わかりやすいのに何もしないってことは 相当な鈍感か相当な脈ナシかのどっちかだね｣
｢ねえ……なんで俺の心折ろうとするんすか？｣
｢傷は浅い方がいいでしょ？｣
｢3年目の傷はつらいっすよ。全然今ですら浅くないんすよ｣
｢さっさと告ればいいのに。ワンチャン同情で付き合ってくれるかもよ、優しいから｣
｢……同情で別れてないのにそんなことないでしょ｣


あ〜、なんらかの事故とかで 先輩のクソ彼氏に対する記憶消えねえかな。


黙々と俺が焼いた肉を、リスみたいに頬をふくらませながら食べる先輩の同期を見つめる。


｢……年下男子のメリットってなんだと思います？｣
｢相性いいってきくけどね？何しても可愛いとか、母性本能くすぐられるとか そういうとこじゃない？｣


大前提として、俺に可愛さがあるかは置いといて……いや、待てよ？先輩は俺のこと可愛いって言ってくれるしな。

……でも、先輩はたぶん 可愛い系にひかれるひとじゃない。年上が好きって言ってたし。


ちらりと店の外を見ると 俯きがちにあるく女の人がいた。まぶたをこするその姿に 気づけば身体が勝手に動いていた。


｢おい、菊池？｣
｢すみません、あとで戻るんで食べててください｣


俺が見間違えるはずがない。









｢先輩！｣












肩を掴んで無理やり俺の方を向かせる。
俺とは全然違う華奢さに驚いた。


シラフの先輩の泣き顔をはじめてみて
そして二度と見たくないと思った。

10→←08

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す