先輩、俺じゃダメですか？ Fuma.K

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俺の会社は金曜日はわりと早く帰る人が多い。ノー残業デーなんて決めているわけではないのだが、気づけばフロアは俺と先輩だけになっていた。


ふと、その様子に気づいた先輩が ぼそりと呟いた。



｢……行かなくてよかったの？合コン｣



｢俺に行ってほしかったですか？｣




『先輩には関係ないです』とか『それ聞いてどうなるんですか？』とか

投げかける言葉は頭に浮かんでいたけれど
先輩の顔を見て、そんな言葉が吐き出せるわけもなかった。




『行かないで』って 先輩の顔に大きく書いてあったから。


こういう時に もう、気持ちを俺へと一気に傾けるような 何かカッコイイセリフでも言えたら良かったのに


俺の頭の中はそんな顔も｢可愛い｣とか、先輩に対してだけはIQが著しく落ちる通常運転。


いや、今日はちょっと違う。

いつだって可愛いよ、誰よりも可愛い。
……でも 先輩の泣きそうな顔は見たくない。




｢嘘です、全部｣
｢嘘……｣
｢合コンなんて予定ありません。先輩が どう思うか 試したかったんです、ごめんなさい｣
｢出会い求めてたんじゃ……？｣
｢先輩がいいのに、そんなのいりません｣



中島先輩の計画も 失った大切な何かよりも

俺は先輩が、これ以上傷つかないようにすることの方が 最優先だ。



｢なんだ、そっか｣



ほっとしたような表情を見せてくれて
俺も安心……



｢良かった……｣



口は笑っているのに、先輩の目から涙が一筋零れて
心臓が止まるかと思った。




｢先輩……？｣




泣かせた？えっ、俺のせい？
そんなに不愉快だった？




｢ごめん、なんでもない……｣




ゴシゴシと乱雑に目元を擦るから
両腕を掴んで 辞めさせた。



｢言って、思ってること全部｣



力が適わないと悟って
せめて目が合わないようにするためか
視線を下げる。

零れ落ちた涙が 先輩のスカートに濃いシミを作った。



｢意識して、すぐに他の人のところにいっちゃうのは……嫌だなって思ったの、それだけなの｣






社内恋愛は慎重にいかないと って
わかってる。



うまくいかなくなったとき
仕事中も気まずいのが目に見えてる。

ましてや、担当なんて。



でもね、先輩
俺は先輩が担当で良かったって心の底から思うし

先輩じゃなきゃダメだって思ってるから。

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