先輩、俺じゃダメですか？ Fuma.K

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｢誰だてめぇ｣
｢菊池です。…………Aさんの後輩です｣


縋るような視線と ぎゅううと押し付けられるアレ。先輩的には逃がすまいと思っての行動なんだろうけど、逃げないですよ俺、逃げないからちょっと、勘弁して。

あーでも、頭の中では何回でも言った下の名前が こう、口に出しても怒られないのマジでいいわ。

Aさん好き。このままガチで俺と付き合って。



｢菊池くんは いつも優しいし 、落ち込んでるとこ そっと寄り添ってくれるし、同じ失敗繰り返さないし、あなたと全然ちがうから！

守る気のない約束も 都合いいときだけ連絡されるのも もうウンザリだよ……｣


触れる指が震えていた。ズルズルと嫌な関係を続けてきても それでも決定的な言葉を投げられなかったのは 、先輩の中に 綺麗な思い出がずっとあったからだろう。

やっと聞けた 先輩のホンネ。


｢……お願い、別れて。もうしんどいの。これ以上 嫌いになりたくない……｣


どう見ても演技ではない涙に 狼狽える男。先輩の意思が固いことを知って、俺へ矛先を向けた。


｢どうせお前ら、本当はそういう関係じゃないんだろ？ 俺を陥れるためにでっち上げただけだろ！｣



｢……俺はA先輩が好きです、数年前からずっと。先輩には申し訳ないですけど、このときを待ってました｣
｢菊池くん……？｣
｢なんで 俺じゃだめなんだろうって ずっと思ってました。絶対に先輩のことを幸せにするのに、泣かせないのにって。……だから こうして先輩が 今 俺を頼ってくれて嬉しいです｣


願わくば、こんなこと 今言いたくなかった。


｢先輩がいつも人のことをいちばんに考える優しいところも、本当は叱るのも注意も苦手でちょっと不器用なところも、いつだって 癒してくれる笑顔も ぜんぶ好きです｣



ねえ、先輩。

さっき俺を褒めてくれたコト
本当かどうかはわからないけど 嬉しかったです。

俺のは嘘じゃないって、どうかわかってほしい。

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