夢で恋は終わらせない。 Fuma.K (ページ31)

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｢気にすんなよ。夢なんて忘れるほうが普通なんだから｣
｢そうかもしれないですけど……嫌なんです｣
｢でも夢日記はやめたんだね｣
｢やめたっていうか、見ないので書くことがなくて……｣

菊池先輩も、中島先輩も
記憶力を強くする本だとか夢にまつわる本を読んでくれる。

……私のために、申し訳ない。

そもそも夢が変わり始めたのはいつから？見なくなったのは？

すべてのキッカケって……。

「菊池先輩は……あれ？」

言葉を止めた私を不思議そうに見つめるふたり。記憶が、蓋をされたかのように出てこなくなった。思い出せない、モヤがかかったかのように何も出てこない。

「A？」

菊池先輩が心配そうな顔で私を見つめる。

彼を見ていると……夢の中にふうまさんに重なって、そのまま儚く消えた。
そっとのばされた手のひらを咄嗟に叩いてしまう。自分でも混乱していた。

「……Aちゃん？」
「おい、どうした？」
「いや、消えないで、忘れたくない……！」

ふうまさん、いなくならないで。
あなたのこと忘れたくないの。

「……菊池先輩、」
「なに？」
「私もう、あなたのそばにいられない」
「は？何言って……」

ボロボロと涙があふれて止まらない。
それくらい、嫌だ。

とっくに気づいてた。菊池先輩が好きだって。私が菊池先輩のことを思う度に、ふうまさんの記憶が薄れて、夢にも現れなくなってしまったんだ。

「ふうまさんのこと忘れてしまうのだけは嫌だ……」

菊池先輩への思いが募るほど、ふうまさんのことを忘れてしまうのなら私はこの気持ちに蓋をしよう。