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｢そんなの、嫌に決まってるじゃないですか。バカにしないでください｣
｢……は？｣
｢私は菊池先輩と付き合いたいわけじゃありません。幸せになってほしいだけです。……最初は、私が幸せにするつもりでした……でも、ここまで嫌われちゃどうしようもないなって｣
言ってて悲しくなるけれど、
相手が私とか、私じゃないとか
そんなことはどうでもいいの。
｢菊池先輩は、菊池先輩がほんとうに好きな人と幸せになってほしいんです｣
｢……あーもう、お前と話してるだけ無駄だわ｣
カバンを持つとさっさと教室を出ていこうとする。
｢菊池先輩……っ｣
｢あのさ、お前が毎日どんな夢見てようと俺には関係ないの。前世も来世も知らねぇ。夢に出てくる男と俺は違ぇの。気持ち悪、厨二病ごっこなんて付き合ってらんねーよ｣
心臓をえぐられたみたいに胸が痛い。
わかってる、他の人にとっては
私の言うことなんて“ ただの夢 ”
眉をしかめる菊池先輩の顔が
どうしても、夢でみたふうまさんに重なる。
気持ち悪いって言われても……
「私が見ているのが 本当にただの“ 夢 ”だとしても、それは 先輩を助けない理由にはなりません」
「はぁ？」
｢先輩の顔、すっごく辛そうでした。あんな顔を見ちゃったから じっとなんてしてられませんでした……。でも、私がズカズカと踏み込む領域ではなかったですよね｣
泣くんじゃない。嫌われるって、怒られるってわかってても こんなことをしたんだもん。
｢作戦練り直して出直してきます｣
｢……は？｣
｢失礼します｣
先輩より先に教室を出て、ぽつぽつと雨が降り出した空の下を走った。
ああもう、どうしたらいいんだろう。
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作者名：ゆき
| 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時：2021年8月22日 22時
