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単純な女なので、先輩の躍動感にあふれた「見ました」が書かれているだけでも嬉しいのです。
「へへ」
「Aちゃん嬉しそうだね」
「先輩と交換日記はじめたんですよ」
「へ、へえ……なかなか古風な距離の詰め方だね?」
今日は久しぶりの図書委員。
誰もいないからおしゃべりし放題。
見ていい?と聞かれたので見せると
中島先輩は顔を曇らせた。
「Aちゃん、これ……夢日記だよね?」
「え、あ、まあ……」
なんかまずかった?内容もそんなおかしくないはずだけど……。
「なんか、変でした?」
「……いや、うん……ほどほどにね?」
「大丈夫ですよ、土日に届けたりはしないので」
「平日は毎日やるんだ」
なぜか中島先輩の顔色は曇ったまま。変だなぁとは思うけど、それ以上追求されないから、私からの質問に答えてもらおう。
「中島先輩、聞いてもいいですか?」
「うん?なに?」
「菊池先輩の元カノについて」
ぴくっと反応して、バツが悪そうに目をそらす。人の色恋沙汰にあれこれ言うのは……とか云々言ってる。
「Aちゃんが何かしたとしても、あいつが振り向くとは限らないし、めちゃくちゃ嫌われるかもしれないよ?」
「わかってます、すごくおせっかいだということも」
例えば、菊池先輩が抱えている問題を私が解決できたとして、それで好きになってもらおうなんて単純すぎる展開を期待してるわけじゃない。
……でも、見たくないんだもん。
菊池先輩のかなしい顔。
それはきっと、夢の中のふうまさんと
顔がおんなじだから……っていうのが
きっと理由のひとつではある。否めない。
でも、誰かの悲しい顔を見たい人なんて
そうそういないでしょ?
笑っていてほしいもん。
「……自分の行動にはちゃんと責任を持つこと。危ないことはしない、殴り合いとか絶対しないこと。……極力動かないでください」
「はい!」
「うわ、絶対守る気ないね」
そう言いながら、人がいない図書室の中で
中島先輩と内緒話をした。
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作者名:ゆき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2021年8月22日 22時