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「前世も来世も知らねぇ。俺が面倒見てやるのは今世だけだ。いいか?」
「うん」
ぼろぼろと記憶が剥がれていく感覚を味わう。もう少しで私はきっと、ふうまさんのことを、前世の私のことを……何も思い出せなくなるだろう。
あなたと……、菊池先輩と一緒にいたい。
今思うことはそれだけなの。
菊池先輩の腕が私の後頭部にまわり、
そっと自分の肩に引き寄せた。
先輩のにおいに
目頭が熱くなる。
恐る恐る、先輩の背中に手を回すと
後頭部に回っていない方の手が私の腰に優しく触れた。
「どこにもいかないで」
「いかないよ」
「……今から言うこと、よく聞いて」
耳元にくちびるを寄せられそっと囁く。
「A、すきだ。俺のそばにいろ」
ボロボロといろんなものが崩れ落ちた。
記憶の片隅のふうまさんは優しく笑っていた。
「私も、風磨先輩がすきです……!」
ふうまさん
さようなら ありがとう。
それから、1週間もしないうちに
私の中の ふうまさんの記憶はすべて消え去った。
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作者名:ゆき | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/my.php
作成日時:2021年8月22日 22時