菊池くんの彼女になるまで。

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誰もいない図書室で、私は膝を抱えていた。


……なんてこった。


頭が真っ白になって、思わず逃げ出して……ものすごく感じ悪かったと思う。


ツバキちゃんに顔向けできないし、佐藤くんにもできないし、菊池くんも……。

結局、授業サボっちゃったけど
どうしよう、そんなことうまれてはじめてだし。



｢Aちゃん｣



頭の中がパニックすぎる、菊池くんの声まで聞こえてきた。




｢Aちゃん｣



はっきりと耳に届いたその声に、顔を上げる。いつもと変わらない顔をした菊池くんが立っていた。




｢菊池くん……なんで、｣
｢Aちゃんは体調悪くて保健室って設定にしてるから｣
｢……じゃあ、菊池くんは……｣
｢腹が痛くてトイレって設定、俺の迫真の演技見て欲しかったよ｣



今、来られても どんな顔すればいいのかわからない……。


罪悪感とか後悔とか、いろいろあるけど

ファーストキスがあれなんだって ちょっと落胆してる自分がいるのは事実だ。



ロマンチックなものを期待してた訳じゃない。 でも、せめてちゃんと好きな人とやりたかった。




｢ぽめちゃんだっけ｣
｢……え？｣
｢Aちゃんの家のわんこ｣
｢ぽめじゃなくて、ぽむね？ぽむちゃん｣
｢あ、ごめんごめん。俺の家の子はね、俺が帰ってくると もう嬉しそうに顔べろべろ舐めてくんの。ぽむちゃんは？｣
｢うちの子も、そんなかんじ……｣




え、何の話なの？

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